戦争・軍事 |東ヨーロッパ

塹壕差で軍隊の実力差を見る




ボスニア戦争中。セルビア軍クライナ第1軍団第16独立大隊の最前線塹壕。
この写真で見る注意点は、地面が掘られているのは、腰上までで、その上に、丸
太、弾薬箱などを載せ、人間の背の高さまで隠れるようにしていること。

1週間前に攻撃して占領した、ボスニア軍陣地の塹壕が、腰上の深さまでしかな
く、占領したセルビア軍が、戦闘に使える塹壕陣地にするための応急処置をした
のである。ボスニアのほとんどの戦線で、ボスニア軍の塹壕は、浅くて狭いとい
う点は共通していて、このようなところから、両軍の実戦での強さが伺い知れ
る。サラエボで見たボスニア軍の塹壕などは、もっと浅くて狭かった。

政治的に孤立したため、経済制裁とNATO軍の空爆を受け、敗退してゆくこと
になるセルビア軍は、現場での戦闘そのものでは、ボスニア軍に対して圧倒的な
強さで優勢を維持していた。

近代戦では、マスメディア報道機関は、各軍の戦闘面における強さなどにはまっ
たく興味がないから、近年の軍事専門家は、兵器スペックやおおざっぱな戦略、
政治経済動向にばかり目がいっていて、こういう部分の分析方法がわからなく
なってしまっているが、「陣地を見れば、その軍の強さがわかる」という基本は
けっこう通用する。当然ながら、米軍のような圧倒的機動力と火力で突き進む軍
隊には、「陣地で見る」はあてはまらないが、局地戦で接近戦をする現地軍同士
の場合は、なかなか簡単な目安だ。

撮影:1994年3月下旬、ボスニア中部ビトゥコブチ戦線。