戦争・軍事 > 戦争・軍事

ジャーナリスト様が好まない戦場映像




東長崎機関のイスラムジャーナリスト常岡浩介による、シリア情勢解説トークラ
イブが、豊島区アジトのコペルニクスで開催された。2013年11月16日



詳細シリア解説は良かったのだが、常岡氏のお薦め報道映像は意外なものだっ
た。彼のお薦め映像は、反政府勢力部隊による、勝利の映像だったのだが、心地
よく観れるように編集しまくりで、アフレコで音楽などをかぶせてしまっている
ので、真実を伝える映像としては落第点なのだ。
 しかし、常岡氏は、「これほどの編集と表現のセンスや技術を持ててることが
素晴らしいのだ」と、反政府部隊の成長ぶりを喝采していた。現場重視型ジャー
ナリストの常岡氏でさえこの感覚であることto、ジャーナリスト様が好む報道映
像とはどういうものかが見えてくる。

一方、作品性などよりも、現実を知りたい症候群一本槍の東長崎機関がお薦めな
のは、反政府部隊側映像の中では以下などがあるが、一流のジャーナリスト様に
とっては、ただだらだらと事実を録っただけで「つまらない」のかもしれない。

21分以上の映像の中で突然、カメラの前に突然落ちる砲弾。そこに美しい編集
やアフレコのBGM音楽はない。美声のナレーションもない。

たった1発が戦線に穴を開ける。
そこから見える軍事視点をいくつか挙げてみよう。

 その1発で少なくとも11人の戦士が戦線を離脱することになり、6分間以上
に及んで戦線に1つ穴が開き、その後10分以上は消極的な防御戦闘に移行。特
に救護シーンでの約1分20秒の空白は、攻めるシリア政府軍としてはおいしい
穴だ。
 負傷兵のために自走重機関銃1台が救護のため戦線から離脱。ゲリラ部隊の後
方支援体制から交通壕のレベル、いろいろなものがわかる。交通壕は1年半前の
より進化しているが、カレン解放軍未満だ。

戦士たちが「アッラーアクバル」と叫びまくってるから、飛翔してくるロケット
弾の唸りを彼らは聴き取れていないようだが、その唸りは映像には入ってる。自
分の位置が敵弾の軸線上になっていることを示すドップラー効果の一致音も録音
されてる。

迫撃砲弾の飛翔音とロケット砲弾の飛翔音がちゃんと判別できる音で録音されて
る。飛翔音から伏せるまでの間がノーカット未編集なので、戦士たちが迫撃砲だ
とわかって伏せてることがわかる。発射テンポからして、照準方法が、スラブ系
軍の基本スタイルだという想像もできる。つまり戦闘リアル報道としては東長崎
機関好み。負傷兵を移動させるときのゲリラ側の支援射撃もわかりやすい。逆に
この支援射撃によって動きを敵に察知されちゃうかもね。

たまたまカメラが向いた方向での着弾が21分間の中に3回もあることから、こ
のカメラマンは、戦闘の成り行きを一瞬前に掴む勘を持ってそうだ。

負傷兵に対する教護態勢もわかるし、戦士たちの戦意喪失の流れもわかる。なる
ほど、戦線というのはこうして崩れるんだ、と。


参考映像1

こちらも、たった1発が戦線を崩壊させ、20人弱が敗走してゆく様子が明確
で、反政府戦士たちの士気レベル、指揮統制なども映し出している。
1発で、前線から20人規模が撤退して戦線に大穴あけちゃってるのもよくわか
る。これはほぼ未編集だからこそわかるのだ。美しく編集したジャーナリスト好
みの作品からはわからない。


参考映像2


以下の参考映像3は、カット編集はあるものの、作戦の流れと規模が非常にわか
りやすい。自爆作戦の手順も。

参考映像3

映像編集に関する美意識思想以外のトークは、内容なかなか良かったよ。
でも外来語固有名詞が多くて、詳しくない人は、数日後にはわかんなくなっ
ちゃったかな。

続く