通信アナリストの眼 INDEX


渡辺真由美のフリー・通信アナリストの眼




8月21日
富士通が16,000人のリストラを発表した。同日、スエーデンのエリックソンが
携帯電話のパーツを製造するグループ会社の売却を決め、そしてアメリカでは
ルーセントに融資している銀行団が会社再建計画を了承する。世界トップの
IT企業のリストラ策と同時に発表される次決算期の収益見通しはNASDAQを揺る
がし、アナリストはどの企業が生き残れるのか判断をする。しかし、企業の命
運は人の人生と同じ。正確に予測できない。富士通という会社の経営陣は、
「ハードからソフトへ」という路線をリストラ時に示した。これは前から
この会社が言ってきたことで、決して新しくなく、むしろ開き直りともいえる。

とは言え、私はこの方向は誤ってはいないと思う。しかし会社の志と実際の
事業の運営は別のものである。傍観者としては、ソフト路線でグッドラック、
としか言いようがない。
アナリストが企業を評価するにあたっては、利益率、収益率といった数値に加え、
コア事業の将来性、部門や人を切り捨てることによるコスト削減、社長の人格、
中長期ビジョン、その他いろいろ見る。ただ、これら諸条件を見事クリアして
いるエクセレント・カンパニーでも、人員整理は社員のモラルを下げる。
人は責任を避けるようになり、腐った状況を見るに見かねてなんとかしようと
する前向きな人が真っ先に犠牲になるという悲劇が生まれる。どの会社でも
同じようなことだろうが、それでも生き残れる会社とだめになる会社、
どこか違うのだろうか。
いろいろなモノサシがあると思うし、その中でこれはごく当たり前のことだと
思うが、私は周りの会社がその会社とどう付き合うかを見る。取引先はもちろん、
提携先がそこと関係を絶つ兆候を見せればそこは危機的な状態にあり、逆に
新たな提携関係が成果を生んでいるようであれば業績の回復は期待できそうだ。
そういう意味で、次世代携帯電話事業で組んだソニー・エリックソン、そして
NEC・松下の提携事業の行方に注目している。