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沖縄のモノレール「ゆいレール」(道の川柳・森川晃)1



 
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  那覇空港駅。 (撮影・東長崎機関)
「那覇市総合都市交通体系基礎研究報告書」
 1)    流動分析(公共交通機関の必要性、規模を想定する)
  1970年の那覇市の人口は276380人。DID面積は1710ヘクタールで
 ある。現況を元に1960年からの変化率を見て、1980年の状況を予想する。ま
 た、沖縄固有の問題である米軍基地の市街地への移行状況により、この変化率は大き
 く変わってくる。
 
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  那覇市旭町
 (撮影・東長崎機関)
ところで、日本の都市の成長は1970年をピークに中軸都市では
頭打ちになり、その飽和度に反比例するように衛星都市では成長が著しい。これは、
中軸都市の絶対的な規模に関わらない。横浜市は名古屋市より人口が多いが、東京の
衛星都市としての成長特徴を持っている。那覇市は大都市ではないが沖縄の中軸都市
であり、1960年代に比べればやや成長が緩くなっている。ところが、那覇市は
 (1970年では市街化区域の約25%に及ぶ)広大な米軍基地をもっている。この
土地は徐々に返還されている。中軸都市の成長が緩くなる最大の理由に、利用できる
土地が無くなってきたことがあげられるが、那覇市では、返還状況如何により急成長
する可能性がある。したがって、この傾向も考慮して交通計画をしなければならない。
各都市の交通手段利用構成の比較(1970年の統計)
  那覇市 宇都宮市 富山市 高松市 大分市
総トリップ数(回/日)
140635
153682
149583
148969
126604
徒歩
21.1%
15.3%
16.9%
13.5%
20.1%
鉄道
0.0%
17.7%
28.0%
22.1%
14.8%
バス
53.1%
28.5%
20.9%
18.0%
23.6%
自家用車
19.5%
18.3%
21.2%
19.3%
22.2%
二輪車
3.51%
18.7%
12.2%
25.6%
18.1%
タクシー
5.28%
0.7%
0.9%
1.5%
1.2%
 那覇市のパーソントリップ調査の結果で、同規模の本土の都市に比べて特徴的なこ
とは、(1)鉄道利用がゼロ、(2)バス利用が多い、(3)タクシー利用が案外多
いということである。鉄道は存在しないのだから当たり前だが、他都市の鉄道とバス
を合わせた配分が、那覇市のバスにあたる。那覇市でも自家用車利用率は特化してい
ないので、公共交通への期待が大きいことがわかる。


2)    土地利用分析(効果的なルートを想定する)

 那覇市にどのような交通需要があるか、その形態を分析する。鉄道駅を中心として
放射状に発達する傾向の多い本土の都市に比べて、那覇市は面的に発達している。つ
まり、「施設」の設置箇所を不規則に結ぶ線上が市街化されている。この傾向がある
同規模の都市は、青森市、八戸市、高松市などである。これらの都市ではメイン交通
軸の設定がとても難しい。要求のあった既存交通軸のすべてに路線を設定すれば過剰
投資になる。複数の既存交通軸を兼用する新たな交通軸を設定すると、どの軸にも半
端に不便な代物になり利用価値がなくなる。

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  沖縄県庁を中心とする国際通りを含む既存都心の北側の
  上之屋地区に新都心を想定している。
  この地区は、1970年当時は米軍基地だったが、
  市街地に再生するため2002年現在は区画整理中である。
 先述のように上之屋地区に広大な米軍基地返還予定がある。那覇空港を含む交通拠
点の小禄地区と、県庁周辺の既存CBD地区と、上之屋の新都心予定地区を結ぶ交通
軸が基準になると考えられる。また、内陸の居住地区への延伸を考慮しなければなら
ない。

3)交通機関分析(効率的な交通形態を想定する)

 交通機関により輸送力は異なる。公共交通の場合、問題になるのはピーク時の処理
能力である。
交通機関の輸送力
輸送機関 最小発車間隔 1時間あたりの輸送能力(人)
動く歩道
0秒
3000〜10000
タクシー
10秒
1200〜2000
バス
90秒
2800〜4000
小量有軌道システム
120秒
3000〜21000
モノレール
120秒
13000〜36000
地下鉄
120秒
40000〜63000
郊外鉄道
120秒
100000〜
  ピーク時の最大トリップ数を30000と想定すれば、モノレールが採用されるは
ずである。
 以上がモノレール計画黎明期の論文の概要である。これに基づいて、30年を経て
沖縄都市モノレールは実現した。

 沖縄都市モノレールの概要については、沖縄都市モノレール株式会社のホームペー
ジに詳しい。
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  沖縄都心モノレール路線図
 (内閣府沖縄開発庁南部国道事務所HPから引用)

続く