ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃イラク

高速道路から判るイラクの国状1



 当方は高速道路に関心がある。もちろん国内に限らず全世界の高速道路に関心があ 
る。路線は市販の地図である程度は把握できる。当初はその程度で満足していたが、 
時を経るごとにそれでは満足できなくなった。高速道路の構造、交通量、運用形態、 
それに計画を含む全路線を把握したい。路線においてもジャンクションのランプの線 
形を立体的に把握したい。これらの要求を満たすために最大限の努力をしてきた。と 
はいっても、一個人の趣味のレベルではたかがしれている。道路管理者や調査団体か 
らの情報に頼ることになる。

 国内においては道路管理者の情報を容易に入手できるので全く問題ない。外国は、 
言語が理解できないことが最大の障壁だが、政治的な障害で情報が制限されていたり 
してなかなかめんどうである。それでも調査団体(日本道路協会、高速道路調査会、 
交通工学研究会など)の報告により61ヶ国については何らかの情報を入手してい 
る。ところがイラクはこの中には含まれていない。くだんの調査団体はおそらく国内 
では先端的なグループなので、ほかの調査グループには期待できない。つまり、国内 
でいくら探してもイラクの高速道路事情については何もわからないと考えられる。
(商社やマスコミの情報は最初から期待していない。大衆の関心を代表する使命を帯 
びたマスメディアが、大衆が関心を示さない高速道路事情に有意義な情報をもたらす 
はずがない。国内においても道路公団民営化で少しは高速道路の取材をしているが、 
政治報道のバックに垂れ流す資料映像の域を超えることはない。当方にとっては何ら 
資料価値がない。)

砂漠の中の1本道は続く。(2002年12月14日、撮影、東長崎機関)
ヨルダン国境からイラクへ入って40キロメートルくらいのところ。
ここら辺はまだ4車線道路だが、シリアからの幹線道路と合流した地点(国境から約90
キロメートル)から6車線になる。
 さて、いきなり英語すらわからない当方がイラクのWEBサイトを検索できるだろ 
うか。まずは地図に頼ってみた。手元には6年前の250万分の1の粗い地図しかな 
かったので、国内大手地図出版社の2003年1月発行の最新地図を購入した。とこ 
ろが、これは決して最新ではなかった。正確には判定できないが15年以上前の代物 
である。イラクの高速道路事情については、かつて近隣のトルコ、イラン、クウェー 
トの高速道路を調査したときに少しは情報を入手している。2003年版の地図では 
バスラ周辺の高速道路はある程度記載されているが、バグダッド周辺の高速道路は一 
般道路を高速道路として表記している。この地図はドイツの大手地図出版社の地図を 
写したものである旨が謳ってあるが、いずれにしても今回の報告には何ら役に立たな 
いものであることは確かである。

 当方は、20歳までは地図と時刻表と理科年表しか読まなかったので、小学校を卒 
業するころにはすでに国内で発行している外国地図が不正確であることに気づいてい 
た。外国の地図は、その国で出版されたもの(洋地図)を入手していた。そのためほ 
とんど国内発行の外国地図は持っていない。今回30年ぶりに購入してみたが何ら改 
善されていなかった。機会があれば、大手書店において外国で発行している日本の地 
図を見てほしい。とても購入する気にはならない不正確なものが多い。成田新幹線が 
実線で記されている地図を見たこともあるし、山陽新幹線の終点がなぜか北九州にな 
っていたりする。未だに中国自動車道や東北自動車道が開通していなかったりする。 
つまり、逆もまた真なりということである。敢えて出版社名を記していないが、いず 
れも自国の地図では最も信頼できる地図を出版している。当方もこれらの出版社の地 
図を多数愛読している。出版社自体の信頼に関わる「水準」をなぜ差別化させるのだ 
ろうか。

	  ◆図1
 高速道路路線図(高速1号)
 ヨルダン国境イミグレーションでの説明板
 図中のA、Bは、図3、図6も同じ場所を示しているので参照願います。
(東長崎編集部より提供)
 今回の報告は、2003年1月5日の東長崎編集部からのHP上での問いかけへの 
回答である。
◆問いかけ
  図1、図7、図8の掲示意義について。
 
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◆図7
 高速道路インターチェンジ利用図
 ヨルダン国境イミグレーションでの説明板
(東長崎編集部より提供)
 まずは問いかけへの回答を記す。
 この掲示板の目的は、高速道路における利用ルール厳守の徹底と考えられる。近隣 
のトルコ、イラン、クウェートは高速道路網が四通八達しており、ドライバーに高速 
道路の運用は浸透している。しかし、西側のヨルダン、シリアなどはあまり慣れてい 
ない。もちろん、イラクのドライバーにも目新しい。

 交通ルールは原則として厳守しなければならないが、ある程度はルーズである。一 
般道路においては速度超過、駐車違反は、あまり罪悪感はないと思われる。車線変更 
禁止もあまり守られていないルールの一つだ。さすがに追い越し禁止、一方通行無 
視、信号無視は少ない。それでも一般道路では安全性を維持している。

 ところが、高速道路では、このようなルーズな常識は通用しない。いずれの違反も 
致命的である。図7の案内板は、インターチェンジの通行方法を明示している。高速 
道路に慣れているドライバーには不要な案内で、慣れていなくても交通ルールを守 
り、交通案内板に従って通行していれば問題はない。不注意で出口を見逃してしまっ 
たとき、入口を逆走したり、本線をバックしたりせず、次の出口でUターンするよう 
促している。また、クローバー型のランプが多いので、目的地の方向とは異なる方向 
へ案内されたような錯覚でパニックに陥らないように注意している。(図8)
 
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◆図8
 高速道路インターチェンジ利用図(拡大図)
 ヨルダン国境イミグレーションでの説明板。
(東長崎編集部より提供)
 イラクの高速道路は無料なので、出入り口には料金所および併設する事務所や高速 
警察隊は存在しない。誰にも見られていないのでランプの逆走もやりやすい。(図13)

◆図13
 インターチェンジの誤走行例。
 通常は青色実線のルートで走行するが、分岐を見落としたとき青色点線のルートを 
走行する可能性がある。高速道路利用に慣れたドライバーならば有り得ない選択だ 
が、交通規制にルーズな一般道路しか走行したことのないドライバーは不可思議な行 
動をとることがある。
 日本でも、初めての都市間高速道路である名神高速道路が開通したとき、高速道路 
の常識が浸透していないが故の珍事は多く発生していた。最も多かったのが駐車違反 
である。もちろん駐車どころか停車も禁止なのだが、そのような道路はなかったので 
なかなか理解してもらえなかった。高速道路は市街地を避け丘陵を通過することが多 
い。風光明媚な区間もある。適当な場所で路肩に駐車し、法面でおにぎりを食べる家 
族連れもいた。今では、高速道路上において自力でパンク修理することさえ危険であ 
ると認識されているが、当時は一般道路の常識を適用させていた。

 東銀座(図14)にちょっとした要件があるとする。首都高速環状線の狭い路肩に 
駐車し、料金所のない銀座出口を徒歩で駆け上がり、要件を済ませて戻ってくる人 
は、果たしているだろうか。首都高速は駐停車禁止なのでもちろん違反である。この 
ルールは厳守されていることになる。ところが、同じ条件でも晴海通りや昭和通りな 
らば何の躊躇いもなく第1車線に駐車させるだろう。5分以内ならば違反にはならな 
いが※1、それを過ぎれば首都高速に停車しているのと同じ違反になる。5分を気に 
するだろうか。少しは気にするかもしれないが、多くは30分くらいならば平気と考 
えているだろう。停車と同時に停車時間をチェックされるケースは稀だから。まあ、 
それよりも自分以外にも駐車車両がとても多いことに起因すると考えられる。こうし 
たことが、高速道路と一般道路の交通違反の常識(許容範囲)が浸透している証明に 
なる。

◆図14
 東銀座周辺地図。
 首都高速環状線が浅い掘割構造で通過している。銀座出口のランプは短く緩い勾配 
で、徒歩でも容易に侵入できる。
 一般に、開発途上国ほど運転が荒っぽい。イラクもこの範疇に含まれる。そこに交 
通ルールを厳守しなければ危険な高速道路が開通したのだから、一見稚拙とも思える 
単純なインターチェンジ利用方法を敢えて明示するのは当然かもしれない。

※1駐車違反と停車違反(JAFのWEBサイトから引用)
【駐車と停車の区別】
1.    駐車とは、『車が継続的に停止することや運転者が車から離れていてすぐに運転 
できない状態で停止すること』(交通の教則ー運転者用ーより)をいい、人の乗り降 
りや、5分以内での荷物の積み下ろしのための停止の場合は駐車にはなりません。
2.停車とは、『駐車にあたらない短時間の車の停止』(交通の教則ー運転者用ーよ 
り)のことをいいます。

続く