ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

亀山連結線 7



 高速道路の利用は設計者の思惑通りにはならないことがある。これは、速度規制や 
料金設定など運用に起因していることが多い。道路の幅は広くても走行できないよう 
制限されている区間(前後区間が狭いので、広くなっている区間も安全のため使用し 
ないケース)や高速出口の信号制御が優先されていないケースなど、設計側の意図し 
ないものばかりである。特に理不尽なのが料金設定である。第二名神高速道路の料金 
はどうなるのだろうか。この料金によっては、思惑通りの理想的な名阪間の交通分散 
は成立しない。

 高速道路の料金は基本的には距離で決まる。第二名神ルートは名神ルートよりも距 
離が短いので、現在よりも通行料金は安くなるはずである。莫大な建設費用を投じ 
て、開通後の料金収入が現状よりも少なくなることを容認するだろうか。現状(20 
03年4月)では、第二東名、名神にあたる区間としては、豊田東ICと豊田JCT 
(東名高速道路と接続)の間、豊明ICと四日市JCT(東名阪自動車道と接続)の 
間の2区間が開通している。いずれも伊勢湾岸自動車道という愛称だが、間違いなく 
第二東名、名神の本線区間である。この区間のうち、東海ICと飛島ICの間は名古 
屋港を横断する3本の斜張橋(名港東大橋、名港中央大橋、名港西大橋)を通過す 
る。まとめて名港トリトンという愛称がつけられている。

 この区間は元々名古屋環状2号自動車専用部として計画され、名港西大橋だけが一
般有料道路として1985年3月20日に先行開通した。通行料金は前後区間が開通
する直前までは普通車で410円だった。長大橋の通過料金としてはまあ妥当な設定
だが、前後区間が開通して名港トリトンの全区間を通過するのにその3倍の料金はい
かにも高い。そのため全区間を通しても1000円以内に収まるようにした。名港西
大橋だけの通過(名港中央ICと飛島ICの間)だけなら250円に値下げされた。
それでも、豊田JCTまで全通したときにはまだまだ高い。第二東名、名神として機
能したときに名港トリトンは特定料金区間であると説明されても納得できないだろう。

 また、料金所の問題もある。豊田JCTから草津JCTまでは名神ルートも第二名 
神ルートもいずれも本線料金所は存在しない。つまり豊田JCT以東から草津JCT 
以西へ(静岡方面から京都、大阪方面へ)向かう場合は、どちらのルートを通過して 
も料金は同じになるはずである。距離は第二名神ルートの方が短い。現状は名港トリ 
トンが特定料金区間になっている。どのような運用になるのか気になる。静岡から八 
日市(草津JCTよりも静岡寄り)までの料金が、京都(草津JCTよりも大阪寄 
り)までの料金よりも高くなるのだろうか。それとも全通した場合は、第二東名、名 
神はJR新幹線と同じ扱いで、東名、名神と同じ料金になるのだろうか。まさか、そ 
れに特急料金を加算することはないと思うが。

 道路も鉄道もネットワーク化すれば経過ルートに関係なく最短ルートの料金が課金 
される。大都市近郊区間ではどのような迂回ルートを経ても料金は最短区間分であ 
る。新宿から代々木まで山手線の内回り、外回りのいずれに乗車しても料金は同じ。 
もちろん不正乗車ではない。高速道路でもこのような運用※2になるのではないだろ 
うか。大阪と九州は、中国自動車道ルートでも山陽自動車道ルートでも料金は同じで 
ある。第二東名高速道路はほぼ東名高速道路と並行しているので、東名高速道路の拡 
幅と考えることができる。料金設定も現状と同じということは容易に想像できる。と 
ころが、第二名神高速道路の名古屋と京都の間は2ルートがかなり離れていて利用形 
態も異なる。東京と小牧の間の東名高速道路と中央自動車道の関係に近い。ただし、 
東名高速道路と中央自動車道は、東京側が接続していないので、料金は別々に設定で 
きる。(中央ルートの方が、恵那山トンネル特定料金区間や八王子ICまでの均一料 
金期間のせいでやや高い。)

※2 迂回ルート
 本線料金所での課金がある区間を経ていなければ、現状でもどのルートを経ても料 
金は最短ルートになるようだ。例えば、名古屋から新潟へは、現在は中央自動車道か 
ら上信越自動車道道経由だが、その開通前は米原から北陸自動車道をひた走るか、東 
名高速、関越自動車道での東京経由による大回りが強いられていた。上信越自動車道 
の開通で距離が短絡され、料金も安くなった。これまで10000円以上だったが、 
10000円を切った。

 実は上信越自動車道開通後に米原経由で新潟に向かったことがあるが、料金は上信
越自動車道経由の料金だった。米原には検札用の米原バリアがありチェックされてい
るが、大回り料金は適用されなかった。後日、米原経由で、上越から上信越自動車道
で高崎へ、さらに関越自動車道で新潟に向かったときも同様だった。(もっととてつ
もない大回りもしているが、当方の人格を疑われそうなので省略する。2000キロ
走っても1000円以内でした。)
 このような酔狂な大回りをする人はいないとは思うが、今後のネットワーク化によ 
り合理的な大回りが選択できるようになるので、料金がルート選択の足枷にならない 
ような運用にしてほしい。

 高速道路は大いなる社会資本なので利用されて初めてその真価が問われるものであ 
る。利用されなければ揶揄の対象にしかならない。もちろんその揶揄は道路を作った 
側に向けられる。しかし、道路は利用しやすいように作ったのだ。利用しにくいよう 
な運用をしているだけである。そのような歯がゆい区間は全国に多数見られる。(山 
陰自動車道が開通しても相変わらず並行する国道9号の渋滞は解消しない。日本海東 
北自動車道が開通しても相変わらず並行する国道7号(新々BP)の渋滞は解消しな 
い...など。)

 江戸時代の名阪間のメインルートは東海道で、鈴鹿峠を越えていた。このルートが 
最短ルートなのだが、近代交通には山越えは不向きだったので中山道ルート(JR東 
海道線、新幹線や名神高速のルート)が選択された。しかし、この近代とはあくまで 
も明治期であり、トンネル施工技術が進歩した平成期には適用されない。第二名神 
ルートは旧東海道ルートをさらにショートカットするルートである。スムースな流動 
移行が進められることを望む。これが亀山連結線の意義を明確にさせるための大前提 
なのである。