ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

西瀬戸自動車道7



 最後に、本州四国連絡道路の通行料金について記す。通行料金が割高ということも 
交通量の伸びない原因の一つだが、どの程度割高なのだろうか。日本道路公団管轄の 
高速自動車国道の料金設定と比較してみる。

 高速自動車国道の料金は、基本的には対距離料金が適用されている。(24.6円 
/km×走行距離(km)+150円(ターミナルチャージ))×1.05(消費 
税)で求めた値を24捨25入(50円単位に補正)した値が通行料金になる。ター 
ミナルチャージとはインターチェンジの利用料金(料金所利用の手数料)ということ 
だが、基本料金と考えた方が理解しやすい。

 この基本的な料金設定のほかに、特定料金区間が設定されている。
 関門特別区間(下関ICと門司ICの間)、恵那山特別区間(飯田ICと中津川I 
Cの間)、関越特別区間(水上ICと湯沢ICの間)、大都市近郊区間(川口JCT 
と加須ICの間、練馬ICと東松山ICの間、三郷JCTと矢田部ICの間、湾岸市 
川ICと成田ICの間、成田ICと新空港ICの間、東京ICと厚木ICの間、大津 
ICと西宮ICの間、中国吹田ICと西宮北ICの間)、および交通量僅少区間(沖 
縄自動車道など)では、やや高めに設定されている。

 この中では関門特別区間が最も 
高いが、それでも本四道路よりは安い。◆表6の「標準料金」は、高速自動車国道の 
基本的な料金設定での換算で、「関門特別料金」は、関門特別区間の料金設定での換 
算である。本四道路は、2003年7月1日以降の新特別料金設定の最も安い利用方 
法である「ETC前払併用」でも「関門特別料金」よりも高いことがわかる。

◆表6
本四連絡橋の通行料金
 高速自動車国道には、ほかに均一料金区間がある。これは複数のインターチェンジ 
のある特定区間でどの区間を利用しても同一料金を徴収するシステムで、都市近郊の 
比較的交通量が多く、インターチェンジ間隔の短い区間に設定されている。首都高速 
などの都市高速道路と同じシステムである。

 均一料金区間には利用区間によってはかなりキロあたり単価の高い区間がある。例 
えば、中央自動車道の調布ICと稲城ICの区間だけの利用では、2.3キロで60 
0円が徴収される。本四道路の海峡部と変わらない高額だが、これは特異な例なの 
で、高速自動車国道で最もキロあたりの料金が高いのは、やはり関門特別区間と言える。

 なお、ここで記した料金は普通車の料金で、車種別の料金は普通車1.0に対して 
特大車2.75、大型車1.65、中型車1.2、軽自動車等0.8の比率になって 
いる。単純にこの比率で掛けて、50円単位に補正すればそれぞれの通行料金は計算 
できる。
(実際の通行料金計算は、先述の特定区間の存在により複雑になっている。日本道路 
公団HP(ホームページ)の「ハイウエイナビゲータ」で求めるのが間違ないと思う。)

 今回の本四道路の割引は第2弾で、実は現在(2003年6月)の料金も本来の料 
金よりも安くなっている。第2弾が実施されても関門特別区間よりの高いのだから、 
本来の料金がいかに高い設定だったかがわかる。もちろん、関門特別区間も標準区間 
に比べれば相当高い。

 標準区間の料金を1とすると、関門特別区間は1.8、本四区間の第2弾は(ET 
C前払併用3.0、ETC特別割引3.5、現金3.7)、第1弾は4.2、本来は 
6.0である。単区間のトンネルや橋梁などの有料道路には割高な料金設定の区間も 
ある。しかし、これらの区間は短いので料金総額はそれほど高くない。そのため高い 
ことを意識せずに利用できる。ところが、本四道路は距離が長いので、単位距離あた 
りの通行料金が高いとその総額は相当高額になってしまう。

 建設費用が高額なので、費用の償却のためには仕方がないという論理は理解でき 
る。しかし、道路は公共事業で営利目的のために建設するのではない。高価でもニー 
ズがあれば建設しなければならない。例えば、東京と横浜の間に幅10キロの川が流 
れていたら、数本のトンネルや橋など多くのインフラが整備されているはずである。 
関門海峡にはトンネル3本と橋1本、さらに1本計画がある。

 土木技術は必要に応じ 
て進化するものである。必要があれば対馬海峡にもトンネルを掘削しただろう。ニー 
ズは技術を駆逐する。しかし、必要がなければ幅1メートルの小川にも橋を架けるこ 
とはない。本四道路は必要に応じて建設したはずである。それが建前である。本当に 
その通りなら採算を度外視して本四連絡のすべての貨客が気にせずに利用できる料金 
設定にすべきである。時間のかかるフェリーと天秤にかけて負けるような橋は、とて 
も社会資本とは呼べない。

 この建前は間違っていたと訂正したとしても、3ルートがつながった今となっては 
遅すぎる。訂正は無意味である。どのような経緯で建設されたとしても、完工すれば 
社会資本として有効活用する方法だけを考えれば良い。この基本的な流れがわからず 
責任追及にしか英知を絞らないので、朽ち果てた箱物が散在している。とにかく使え 
ば良いのだ。保守費用がかかるので使わない方が良いということに帰結するかもしれ 
ない。しかし、これは使い方が悪いのだ。まずはそう考えて、再考するのが社会資本 
利用の正しい流れである。

 東京駅から名古屋駅までのルートで、東海道新幹線と東海道線を天秤にかける人は 
いるのだろうか。夜22:00新幹線の最終が出発した後ならば、東海道線(ムーン 
ライトながら)と高速バス、それに宿泊を天秤にかけるかもしれない。ほかの時間帯 
では稀だろう。これは、道路でも同じである。東京から諏訪まで、中央自動車道と国 
道20号を天秤にかけるだろうか。中央自動車道が致命的な渋滞を引き起こしていた 
としたら、旅行中止と鉄道利用を天秤にかけるような気がする。

 本四道路も本来ならば、この例における東海道新幹線や中央自動車道の位置に置か 
れるべきインフラである。西瀬戸自動車道は構造的な問題から敬遠され、3ルートと 
も通行料金の問題で敬遠されるというのは、本四道路のプロジェクトそのものがミス 
と言われても仕方がない。道路構造の件は地道に解消に向かっている。料金の問題、 
すなわち運用面での画期的な対策に期待したい。