ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

枝線が本線であるかのような構造(東北)1



【はじめに】

 たとえば、東京から中央自動車道を西進して大月JCTに達したとき、中央道
本線 をそのまま走行すると河口湖に向かう線形になっていたらどうなるのだろ
うか。甲府 方面に向かう場合は、あらかじめ分岐線へ向かうために減速して車
線変更をしておか なければならない。分岐線は大月ICの流出線がさらに分岐
する。現状の河口湖方面 の分岐線と甲府方面の本線の構造が逆になれば、ここ
を初めて通過する多くのドライ バーが困惑するだろう。

 再度通過するときにはなぜこんな構造になっているのか不思 議に思うだろ
う。実態は70%以上が甲府方面に向かうのである。ドライバーの多く は、甲
府方面に向かうときに甲府の出口以外でウインカーを点滅させることは想定し
ていなかったと思う。

 河口湖方面の分岐線は観光路線なので季節、曜日、時間帯により交通量の変動
が大 きい。したがってピーク時には甲府方面へ向かう交通量よりも多いときも
あるかもし れない。しかし、年間の全交通量から算定した1日あたりの交通量
の差異(甲府方面 が72%、河口湖方面が18%)はあまりにも大きい。ピー
ク時だけのために道路構 造を変更するのは得策とは言えない。

 高速道路同士の結節点(ジャンクション)の構造を見るだけで、広域における
主た る交通流がある程度わかる。路線名称に沿って走行すればおおむね目的地
への最適 ルートになるが、長い路線では利用実態が路線名称にこだわらないか
たちになる。

 東名高速道路は東京から小牧までの全線が名実ともに本線で、すべての分岐点
(イ ンターチェンジ、ジャンクション)において、本線通過交通が圧倒的に多
い。道路構 造は全線において本線が連続している。このような道路は迷うこと
なく、初めてのと きでも安心して利用することができる。しかし、中央自動車
道には本線通過交通より も分岐交通が多いジャンクションがある。

 長野自動車道と接続する岡谷JCT(ジャ ンクション)では、長野道への分
岐は、東京方向からは約57%、名古屋方向からは 約60%である。いずれも
本線通過交通の方が少ないのだ。ただし、この差異は著し く大きいものではな
いし、地形の制約、開通経緯(中央道の開通は1981年3月3 0日で、長野
道の接続は1986年3月25日で、接続までの5年は中央道通過を本 線構造
としなければならない)などの条件により中央道直通を本線とする構造になっ
ている。

◆写真A1
岡谷JCT
中央道下り線(甲府方向)から長野道分岐部、名古屋方向をのぞむ。
(2005年6月6日、著者撮影。)
 都市高速道路の場合は、道路用地、構造に制約が多いため、常に需要に応じた
ジャ ンクションを整備することは難しいが、都市間高速道路では開通後の線形
改良も可能 である。しかし、長期に渡る現況交通の規制が強いられるし、建設
費用は決して少な くないし、案内板の変更や広報活動など、多くの作業が発生
する。安易に着手すべき ものではない。そのため、現状は実態に合わないが、
将来は丁度良いかたちに整備し ておく場合もある。まれに、既存の交通流の移
行を促進する意図がある場合もある。
 本稿では北東北圏の高速道路のジャンクションに着目する。

続く