ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

観光路線高速道路化の条件02



【現状】

 さて、横浜横須賀道路だが、狩場ICから衣笠ICまでは平日交通量の見込め
る産業道路である。半島縦貫道路という特性により通過交通は発生しない。久里
浜から房総半島へのフェリーが就航しているが、高速道路の規格に影響するほど
の交通量ではない。衣笠ICから終点の馬堀海岸ICまでは休日の交通需要に対
応する道路であ る。つまり、観光道路である。

 ルートは、三浦半島のほぼ中央軸稜線に沿う。丘陵地を抜けるトンネルや、高
々架橋で谷を渡る山岳道路の様相である。東京湾、相模湾の海岸市街地へは、枝
線が連絡している。釜利谷JCTで横浜横須賀道路金沢支線を経て横浜市金沢区
へ、逗子ICで逗葉新道※1を経て逗子市や葉山町へ、横須賀ICで本町山中道
路を経て横須賀市街へ、衣笠ICで三浦縦貫道路を経て三浦市へ高規格の有料道
路が連絡する。

 横浜横須 賀道路は、東海道軸を主軸と考えた場合、横浜新道の支線のような
ものである。わずか総延長32.4キロの支線にさらに4本も枝線が整備されて
いる。一般的に半島の道路交通は海岸線に沿ったかたちで整備されることが多
い。横浜横須賀道路が稜線を貫通し、そこから海岸線へ下るかたちでの枝線の整
備は、まるで血管のようだ。三浦半島という腕の中央に動脈が貫通し、枝葉末端
には毛細血管が張り巡らされているのだ。尖端の三浦市から根本の東海道軸ま
で、東京湾側の横須賀市、横浜市の市街地を通過せず、相模湾側の葉山町、逗子
市、鎌倉市の市街地も通過しなくてもよい。合理 的な道路配置である。

※1 逗葉新道
 逗葉新道は、横浜横須賀道路開通以前から神奈川県道24号のバイパスとして
供用されていた。東京湾側から相模湾の逗子海岸に逗子市街を迂回するかたちで
整備された。横浜横須賀道路が後から接続させて枝線として取り込んだのだ。ほ
かの高規格有 料道路はすべて、横浜横須賀道路本線開通後に供用されている。

◆地図1
横浜横須賀道路の路線図
次のインター以外は全方向に連絡するフルセットインターである。
本線終端の佐原IC、浦賀IC、馬堀海岸ICは狩場方向のみのハーフインター。
金沢支線の各インター(図に記していないが、釜利谷JCTから順に金沢自然公
園IC、堀口能見台IC、並木IC)はすべて狩場方向のみのハーフインター。
金沢自然 公園ICは狩場方向のUターン専用というかたちになっている。
 道路の平面構造は、狩場ICから衣笠IC、さらに観光道路区間を経て佐原
ICまでが4車線、佐原ICから終点までは2車線対面通行になっている。とこ
ろで、先述の毛細血管は、横浜横須賀道路金沢支線以外は、2車線対面通行であ
る。1日の交通量が10000台未満ということである。佐原ICから馬堀海岸
ICまでの区間も平面構造においては毛細血管のようなものなのかもしれない。
そう考えれば、交通量の少 ない区間に整備された理由がわからないでもない。

 衣笠ICから佐原ICまでは4車 線区間だが、衣笠ICから馬堀海岸ICま
でを枝線と考える。すると、本線は狩場ICから衣笠ICまでで、枝線が5本整
備されていることになる。馬堀海岸ICの交通量は観光シーズンの夏季に増大す
ると考えられる。1年を通して交通量統計を見てみないとはっきりは言えない
が、おそらく衣笠ICから先は枝線と考えて支障のない交通パターンになると思
われる。今回開通した佐原ICから馬堀海岸ICまでの2車線 対面通行区間が
拡幅されることは当面ないだろう。

 ここまでは、横浜横須賀道路を東海道軸と三浦半島の各都市を連絡する便利な
道路としての視点で記した。これで特に問題はないのだが、それでは当方が敢え
て着目するまでもない。今回の馬堀海岸ICまでの全通には、ちょっと気になる
点があったのだ。

【経緯】

 横浜横須賀道路は、当初、東海道軸から三浦半島の稜線を経て横須賀市への利
便性を高めるために計画された。一般国道16号のバイパスなのだ。今は誰も知
らないと思うが、開通前は横浜南バイパスと呼ばれていた。国道16号は東京湾
沿いに横浜市と横須賀市を結んでいる。バイパスはこの交通を捌くように整備さ
れる。したがって、相模湾側の利便性よりも東京湾側が優先される。三浦半島稜
線上でもやや東京湾 寄りに整備されているのはそのせいである。

 三浦半島の稜線にはもう1本三浦半島中 央道路が計画されている。これは、
神奈川県道217号として葉山町で部分開通している。本当の中央稜線は、横浜
横須賀道路と三浦半島中央道路の真ん中あたりだろう。

 横浜南バイパスのころは、交通量の多い国道16号の渋滞回避のためだけを考
えていた。交通量は多くても1日40000台くらいだろうか。それならば4車
線で十分だ。三浦半島だけの交通を考えていればよかったのだ。現状の交通流は
この考え通りで、インフラの受給バランスがよいように見える。過剰インフラと
して指摘されることもない。むしろ、金沢支線に首都高速湾岸線が接続するまで
は、狩場ICと日野ICの区間で供給が不足し、狩場方向の六ツ川TBの交通集
中起因の渋滞は定常化して いた。

続く