ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

名阪国道らしいアンバランス4



 15番の上野東ICは三重県国道422号に、16番の上野ICは国道368
号に接続する。わずか1キロのピッチで似たような名のインターチェンジが連続
するが、出口を間違えると国道165号に到達したときには、約10キロのロス
になる。このあたりが環状ルートの怖いところだ。

 17番の大内IC、18番の白樫(しらかし)ICは伊賀市西部の工業団地に
連絡する。つぎの19番の治田ICは、「はった」と読む。7番の伊賀ICから
19番までが伊賀市である。名古屋と大阪の間のほぼ中間に位置する都市だが、
東海道の筋からはずれているせいか地味である。それでも、名阪国道は13箇所
もインターチェンジを設置している。鉄道の利便性はよくないが、道路の利便性
だけは抜群である。名古屋、大阪のいずれも1時間程度で到達することができ
る。軽工業の生産拠点だけでなく、流通拠点としてもっと活用されてもよいと思う。

◆写真6
 No.19 治田IC
 名阪国道上り線から、治田IC、名古屋方向をのぞむ。
(2008年10月13日、著者撮影。)
 治田ICの先、名張川の渓谷を新五月橋で越えて、奈良県に入る。ここから終
点までは再度、山岳区間になる。20番の五月橋(さつきばし)IC、21番の
山添(やまぞえ)IC、22番の神野口ICまでは奈良県山添村に位置する。神
野口は「こうのぐち」と読む。五月橋ICは、奈良県道4号笠置山添線、国道
369号月ヶ瀬街道を経て奈良市に連絡している。山添IC付近は村役場を含む
市街が少し見られる。神野口IC付近には何もない。大阪方面から三重県名張市
には最短距離で連絡するくらいで、市街地はない。

 つぎの23番の小倉(おぐら)ICは、奥宇陀広域農道(やまなみロード)に
接続している。旧山辺郡都祁村(現奈良市小倉町)に位置している。字名ではな
く宇陀ICになっていれば、快速道路で宇陀市に連絡していることがわかりやす
いと思う。

◆写真7
 No.20 五月橋IC
 名阪国道上り線五月橋SAから、五月橋IC、大阪方向をのぞむ。
(2006年5月4日、著者撮影。)

◆写真8
 No.22 神野口IC
 名阪国道上り線から、神野口IC、名古屋方向をのぞむ。
(2008年10月13日、著者撮影。)
 24番の針(はり)ICは、国道369号に接続する出入り交通の多いイン
ターチェンジである。道の駅(針T・R・S)の設置により、ダイヤモンド型で
国道369号に直結していた亘り線を、3重立体の3枝直結型で出入口車線を集
めるように改造した。この改造計画を知ったとき、名阪国道の高速道路格上げ準
備かと気になったが、そんな遠大な計画ではなく、渋滞対策の「措置」だった。
道の駅の利用は多く、名阪国道最大の休憩施設である。ちなみに、針T・R・S
は、「はりてらす」と読む。インターチェンジのような地名の読み方は気になる
が、おしゃれな固有名詞の創作は困ったものだ。なぜ「てらす」なのか、一応わ
かっているが、しゃくなので敢えて記さない。

◆写真9
 No.24 針IC
 道の駅、針T・R・Sから、名阪国道針ICをのぞむ。
 本線の下を針IC入口ランプがくぐり、上を針IC出口ランプが越えている。
(2003年1月11日、著者撮影。)
 25番の一本松(いっぽんまつ)ICを過ぎると天理市に入る。26番の福住
ICは、「ふくすみ」と読む。「ふくずみ」と濁らない。実は、17番の大内
ICから、福住ICの先の桜峠までは長い上り坂になっている。途中にいくも谷
を越えるので、アップダウンを繰り返すが、約27キロで、360メートル登っ
ている。平均1.3%の勾配である。大型車でもそれほど速度低下が生じない勾
配だ。しかし、桜峠の西側、奈良盆地への勾配はきつい。標高521メートルの
桜峠から、77メートルの天理ICまで、わずか11キロである。平均4%の勾
配が連続する。

 名阪国道は、高速道路ではないので、制限速度は60キロである。実際には、
三重県内の山岳区間以外は80キロ以上で流れていて、60キロ走行は危険なく
らいである。ところで、桜峠から天理ICまでは直線ではわずかに5キロであ
る。勾配を緩和するために倍以上の11.1キロのワインディングロードにして
いるのだ。カーブが連続する勾配区間は、さすがに80キロ以上では走行できな
い。名阪国道を高速道路に格上げする際には、最大のネックになると考えられ
る。現状では、名阪国道を象徴する区間である。

 この坂路区間の途中に、27番の五ヶ谷ICがある。「ごかだに」と読む。ち
なみに、五ヶ谷ICは奈良市にある。くだんのワインディングのせいで、最短距
離の直線よりも大きく北に膨らんだため奈良市に入り込んだのだ。
この先は、高瀬川の谷に沿って、28番の天理東IC、そして、名阪国道終点の
29番の天理ICに至る。天理ICの先は、本線がそのまま西名阪自動車道にな
り、高速道路規格で大阪に向かう。西名阪自動車道は、大阪側の松原JCTを起
点(1番)として昇順にナンバリングされているため、西名阪自動車道の終点に
あたる天理ICは6番である。つまり、天理ICは、名古屋方面からの下りでは
名阪国道の29番で、大阪方面から上りでは西名阪自動車道の6番になる。

◆写真10
 No.26 福住IC
 名阪国道上り線から、福住IC、名古屋方向をのぞむ。
(2008年10月13日、著者撮影。)

◆写真11
 No.27 五ヶ谷IC
 名阪国道下り線から、五ヶ谷IC、大阪方向をのぞむ。
 この撮影直後、チェーン規制になった。
(2009年1月12日、著者撮影。)

◆写真12
 No.27 五ヶ谷IC
 名阪国道下り線から、五ヶ谷IC、大阪方向をのぞむ。
(2009年5月23日、著者撮影。)
 名阪国道の前後に高速道路が直結して、文字通り名古屋と大阪を結ぶように
なって約30年を経た。高速道路に格上げされることなくアンバランスな高規格
道路として重交通を担ってきた。現在でもその計画は消えたわけではないが、
2008年2月23日の新名神高速道路の開通により事実上頓挫したと考えざる
を得ない。しかし、新名神高速道路の開通で、交通量の減少は10%程度であ
る。まだ、1日あたり50000台以上の通過が見られる。4車線の名阪国道の
設計交通量はおおむね36000台くらいなので、ほぼ飽和状態の微妙なバラン
スを維持している。一触即発ということだ。

 事故や工事によるちょっとした車線規制で、大渋滞を引き起こす可能性があ
る。高速道路に格上げして、設計交通量を48000台に増やしても過剰インフ
ラとは言われない代物なのだ。昨今の景気低迷で道路作りは目の敵にされている
感がある。東京から見れば、名古屋と大阪の間に3本の高速道路が必要とは思え
ないだろう。

 きっと、いつまでもアンバランスなまま使われ続けるのだろう。それも名阪国
道らしい。少なくとも、横浜新道のようにハンパなかたちで永遠の有料道路に改
造されるよりはましである。

◆表1
 名阪国道のインターチェンジ一覧。
【あとがき】

 レポートを記すとき、あまりほかのメディアの発信する同種の情報は気にして
いない。道路はメジャーな分野ではないので、意識しようにも情報が少なすぎ
る。公的機関の発信するデータを参照するくらいだ。しかし、今回のようないか
にもドライブ日記的なものは、個人のWEBサイトにいくらでも似たようなもの
を見つけられる。また、インターチェンジの羅列のような情報は、フリー百科事
典『ウィキペディア(Wikipedia)』に詳しい。敢えて、当方がまとめる必要は
ないだろう。着手すべきか迷ったが、名阪国道が特異な出自で、アンバランスな
運用をしていることは確かである。特筆すべき道路なのだ。これまでは、比較対
象がなかったので、筆力は気にすることなく内容の特異性だけにこだわってき
た。今回は、その気になれば同じネタで説得力のある美文をネットサーフィンで
見つけることができるだろう。比較され、批判され、呆れられるかもしれない
が、名阪国道の魅力にはかなわなかったのだ。勘弁してほしい。
 
(2009年6月12日、脱稿。)

続く