ヒマヒマなんとなく感想文|

ジャーヘッド


(加藤健二郎 2006.2)

「ジャーヘッド」
監督:サム・メンデス、
出演:ジェイク・ギレンホール、
ピーター・サースガード、
クリス・クーパー、
ジェイミー・フォックス他

兵隊たちとともに戦場へ出るときの盛り上がりには、バカな男たちの世界独特の魅力がある。そう、戦場へ出る兵士たちの中で楽しくやっていくためには、バカになれたほうがいい。バカになるためには、率先してアホらしいことをやり、盛り上るときにはなにでもいいから、でかい声出すことである。私は、ニカラグア軍とともにジャングル戦に参加したとき、「でかい声出すとバカになれる」ということを知った。

 戦争を描こうとすると、今までは激しい戦闘シーンを使うことが多かったが、この映画は、そのようなアクションに頼らないでここまで戦争をリアルに描いたのだから素晴らしい。そう現実の戦争なんてこんなものなのである。こんなものがどんなものなのかは観てもらえば、だいたいはわかるでしょう。だから、そっちの主題のほうは置いといて、「バカになる」ことについて述べてみたい。

 私が戦場に思い出の中でもっともワクワクできるのは、出撃するときのハイテンションにどっふりと浸ったときである。「さあ、行くぞ!」って盛り上るときが、軍隊の中にいて最高の瞬間だ。バカになれない人は、この最高の瞬間を共有できず冷めている。そういう人は戦場にも軍隊にも行かないほうがいい。自分で自分のことを「頭いい」と思っている人は、戦場向きではない。また、「自分は他の人よりも価値ある人間だ」と思っている人にも戦場は向いてない。ここで言う「向いてない」は「生き残れない」ということではなく、「戦場をエンジョイできない」ということである。

 さて、いかに米海兵隊がバカッぽい(ジャーヘッド)かというと、出撃前に戦争映画「地獄の黙示録」を見て戦意高揚になっちゃってるところだ。1980年代の米国は、国家レベルでのベトナム戦争後遺症で後ろ向きになっていたのである。その負け戦をテーマにした映画でも喜んで盛り上れれば、もう最高に戦場向きといえるほどジャーヘッドになれてるってか。合格!

 しかも地獄の黙示録のヘリ部隊は米陸軍。米軍内事情になるが、米陸軍と米海兵隊の対抗意識はかなり激しいものがある。陸軍の勇姿を見てあれだけ純心にハイになれればジャーヘッドな海兵隊員いっちょ上がりってとこか。

>> 映画原作 「ジャーヘッド・アメリカ海兵隊員の告白」