ヒマヒマなんとなく感想文|

大統領のカウントダウン


(諸橋博子 2006.2)

「大統領のカウントダウン」
監督:エヴゲニー・ラヴレンティエフ、
出演:アレクセイ・マカロフ、ルイーズ・ロンバード、ベチェスラフ・ラズベガーエフ、ジョン・エイモス他

大ヒットして既に続編が決まっているロシア映画「大統領のカウントダウン」は、いろんな要素がテンコ盛のアクションムービーだ。
え?ロシアって文芸映画か地味なイメージだって?それが違うんだな。これまでのロシア映画のイメージでも、ハリウッド系大規模予算映画でもない独特の雰囲気があるのだ。

チェチェンゲリラに拷問されテロの濡れ衣を着せられたロシア軍少佐の孤独な戦い、モスクワのサーカス占拠、女性ジャーナリストの命がけの取材・・・、という設定は、モスクワの劇場やベスランの学校占拠事件を連想するが、記録映画などではない。潔く娯楽映画。

ロシア側視点だけどチェチェンがワルモノとは限らない。また、スーパーヒーローのスモーリン少佐は、ハリウッドヒーローと面食らうほど違うのだ。熱い思いを内に秘め、淡々と。でも情感と使命感のにじみ出る行動が胸を打つ。これ見よがしなアピールなどしないシブさがカッコイイのだ。求めているヒーロー像がアメリカとは違うのだね。正義のためならいくら犠牲者を出してもいいんだというノリじゃないのも、当たり前なのに、映画の中では妙に新鮮だ。そして、全編を通して暑苦しくないのは寒い場所の話だから、だけではないと思う。娯楽映画もロシア風に味付けすると、こんな感じになるんだね。

連想されるいくつかの現実に起こった事件と、この映画のそれとの解決方法を比べてみると面白い。というか、つい、今まで観てきたアクションや報道を元に展開を予想しちゃうんだが、その先入観が結構外されてしまう。お、そう来たか。ロシアの人たちの理想か、少なくともそう見られたいのかな。少なくとも、アメリカ人がヒーローの映画ならありえないし、あのロシアが?とも思えて興味深い。そもそも、今まで「悪役」代表だったロシア人がいい人だってことが新鮮なのかもしれない。

娯楽映画だから、真実かどうかなんて関係ないんだけど、チェチェン派の人たちにはどう写るんだろう。
逆に、ロシア軍マニアには、軍が全面協力しているところが見逃せない。
この春は、「大統領のカウントダウン」に続き、ロシア版マトリックスの「ナイト・ウォッチ」も公開され、新しいロシアの映画の波が来るかな。