ヒマヒマなんとなく感想文|

「不都合な真実」


(加藤健二郎 2007.1)

「不都合な真実」 文部科学省特選作品
監督:デイビス・グッゲンハイム、出演:アル・ゴア

 接戦の大統領選の末、破れた米国のゴア氏の、敗れた後の生き方は、温暖化への警笛、環境保護、CO2削減への世界的な活動だった。もし、天下の米国大統領になっていたら、戦争の1つ2つもやらなければならなかったであろうし、環境というワンテーマにこれほど熱中できなかったであろう。この映画を観てみると、ゴアは大統領になれなくてラッキーだったかな。いや「ラッキーだった」と感じさせてしまう生き様を見せてしまえるところが、ポジティブ人生だ。

 で、ゴアのポジティブ人生のおかげで、日本の工業界は、ウハウハの予兆である。環境への配慮をセールスポイントにした工業製品では日本が強い。「省エネ製品を使おう」とゴアが世界に唱えてくれる。これは「日本製品を使おう」と同意語といってよい。米国の次の大統領選挙で民主党が勝てば、それはそれは心強いし、勝たなくててもたぶん、ゴア路線は世界に広がるだろう。なんつったって、天下の日米同盟が進めるんだから。

 さて、この映画では、ゴアは唱えていないが、日本は環境保護に対して、もうひとつ貢献をしている。家族大切主義の強い米国ではこれは言えないだろうってか。それは、現在日本が推進している少子化人口減少路線である。一部の人たちは、「少子化は問題だ、人口減少は問題だ」と言っているが、世界的には人口激増に向かっている中、人口減少路線は、地球規模で見れば、これも褒めてもらえること。環境破壊の根本的な原因は、「人間がいっぱいいすぎること」なんだろうから。こっちの路線では、中国から褒めてもらえるね。

 CO2テーマだから、圧倒的な米国バッシング映画であり、自虐史観といわれてたころの日本なんかよりもずっとすごい自虐観だ。日本人は、自国の自虐観を「いかん」という傾向が強まっているが、米国は、意外と自虐好きだ。で、なんとなく、自分バッシング自虐観のできる国は発展してる気がする。いつも、自分は正しくて最高だ、と酔ってるようでは停滞し、抜かれる。米国が、なんだかんだいっても世界のトップに君臨できてるのは、この自虐好きのせいかもよ。