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「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 下」


(加藤健二郎 2007.9)

「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 下」宮島茂樹 都築事務所

不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上 宮嶋茂樹氏は、自分の心情描写はかなり正直である。
とかく、格好いいことだけ表現した戦争ジャーナリスト業界において、この正直 さは、真実を伝えるという視点からも褒められることだ。

カトケンについての記述が加藤健二郎とフルネームで3回ほど出てくる。 しかも、宮嶋氏の目からは、カトケンはジャーナリストやカメラマンではなく、 軍事評論家である。

その軍事評論家が人間の盾とともに居座っているドーラ地区(バグダッド南方)へ は、宮嶋氏は怖くてなかなか行けなかったことも正直に書いている。これは、宮 嶋氏だけではなく、バグダッドの高級ホテルで監視されていた一流ジャーナリス ト全員が、同じ心境だったのだそうだ。格好つけるタイプのカメラマンだった ら、人間の盾や軍事評論家が日常生活を送っているドーラに怖くて行けなかった とは書きたくない。

そして、カトケンの「イラク戦争最前線」を読んでしまうと、一流ジャーナリス ト軍団が、ドーラ地区を恐れて近づけなかった姿が、滑稽に見えるだろう。宮嶋 氏は、「イラク戦争最前線」を読んでくれているので、それをわかっていて、一 流ジャーナリスト様たちの滑稽さを意図的に伝えたかったことはわかる。私も、 宮嶋氏の本は、何冊も読んでいるので、彼のそういう本心は、よくわかってい る。さすが、不肖・宮嶋だ。

また、米軍戦車部隊が、バグダッド中心街に突入してチグリス川を渡河する戦闘 のときに、どこへ取材に行ってよいかわからなくなって、ホテルの中からの撮影 のみになってしまったときの、パニック的な心境と行動の描写もなかなかリアル でいい。ボスニアやチェチェンで何度か経験したが、戦闘シーンなんて、そうい うことが多い。特に市街戦の場合は。しかし結果的に、ホテルの上から俯瞰する ようなアングルでの撮影に徹した宮嶋氏の写真は、現場に近づく発想しかなかっ たカメラマンよりも、戦闘の全体像がわかる写真を撮った勝ち組になっている。

これは、カトケンの「イラク戦争最前線」に書かれている 宮嶋氏とのバグダッドでのたった一度の会話シーンだが、 このときのことも当然ながら、宮嶋氏の本にも書かれている。
両方の視点から見れるという点では、ジャーナリズムのお手本かね。
ビビリアンナイトを読んで、「なるほど、そういう状況だったのなら、宮嶋さん、 ピリピリ緊張してて当然だよな」とよーく理解できました。

(加藤健二郎)

>>「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト 上」