ヒマヒマなんとなく感想文| 戦争と音楽の深い関係

芸術を戦略物資に変換したロシアの底力

(2008.8 加藤健二郎)

「戦闘と都市、レニングラード」(VHS)

 第2次世界大戦中の独ソ戦。レニングラードといえば、1941年夏から 1944年1月までの約900日間、包囲されながらも頑強に抵抗し生存した町 である。その「頑張ったぜ、ソ連人」ドキュメントだ。ソ連にありがちな国策映 画にも見えるのだが、制作は英国、1963年だ。

 レニングラードの攻防戦は、900日間包囲戦というロゴが輝くが、戦闘は、 それほど激しかったわけではない。レニングラード市民は、餓死凍死との戦いが 主戦場だったのである。その中、「趣味を持たない者から先に死んでいった」と いう解説とシーンがある。飢えていても、演劇や音楽会などの公演は続け、市民 には、絵画などを奨励していた。飢えた体での公演で倒れる者も出たが、観客の 側は食べ物に匹敵するエネルギーを充填されたという。街中から、音楽が消える と、市民は希望を失い恐怖を感じるということで、街路スピーカーで曲を流し続 け、レコードがダメになると、メトロノームを流し続けた。音を楽しむのが音楽 なのだから、メトロノームも音楽だ。

 芸術をエネルギー源にして包囲戦を戦いぬくとは、さすが、ロシアが芸術大国 であることを発揮している。大国の条件として、徹底的に踏ん張れる国民性とい うのがあるかもしれない。小国は大国に頼ればいいけど、大国は、自分が踏ん張 らなければならない。その観点からみると、国内戦闘に持ち込まれたらさっさと 降伏した日本、ドイツ、フランスは、ユーゴスラビアよりも精神的弱小国かな。
フランスは芸術を戦争に勝つ糧に変えることができなかったね。