ヒマヒマなんとなく感想文|

音楽CD「をかしがいっぱい・行志堂」

(2008.11 加藤健二郎)

「をかしがいっぱい・行志堂」行志堂

歌と、ギター+ハーモニカのシンガソングライター行志堂。

収録曲は、6曲、前向きすぎる明るい歌から、悲しみを乗り越える旅、なんてい う歌もあり、犯罪みたいなことやって高飛びから逃げ遅れた歌、恋愛ソングま で、幅ひろい。

行志堂さんほど、音楽の基礎や論理、発声法などがしっかりしている人は、シン ガーソングライターには珍しいらしい。バグパイプとセッション曲を作るとき に、感性の弱い理系の私に、最後まで楽譜作りにつきあえた人である。他のシン ガーソングライターさんたちは、「イメージとノリで、わかれよ」って言いたい 分野だったろう。板橋本町のスタジオで何度も、しこしことやりましたよね。

そんな基礎から発している人だからなのかもしれないが、一般基準に近いといえ る視点から、いろいろな世の中の突飛な現象や、変なことやる人に純粋に感動し て、それらを、ささっと歌にしてしまう。自分がヘンなことやろうとしているカ トケンみたいの人間だと通り過ぎてしまうような景色をしっかりとした作品にし てしまえる能力は、見習いたい。

カトケンのこの5年間のバグパイプ驀進人生で出会ったシンガーソングライター の中で、最も「音楽で人生やってこうぜ」と悪の道へ誘惑したい才能を持つ人だ が、基礎からしっかりやるタイプだからこそなのか、なかなか定職を辞めて、 ぶっとんだ人生へ飛び出そうとしてくれない。「シンガーソングライターで食っ ていけないって諦めてる男って多いけどさあ、みんなが諦めてるからこそ実は チャンスかもよ。これからの世の中、バカやったもん勝ちよ。中途半端に賢い生 き方なんて、みんな経済不況とともにドツボだぜ」なんていう怪しい罠にはぜん ぜん動じない行志堂なのだ。行志堂っていう名からして動じなそうだよね。

今回、行志堂作詞作曲の「バグパイプウィザード」をこのCDに入れなかったの は、「ウィザードは、生で聴いてほしい」という両者の了解による。ぶっ飛んだ 人生へまだ飛び出してくれない行志堂さんをムリヤリ費パリ出すには、カトケン 自身がもっともっと有名になって、バグパイプウィザードの行志堂として出ざる おえなくなるように仕向けるしかないのかな。そのために、CDにはウィザード を入れませんでした。

で、どうやって有名になる? それって、簡単ではないぞ。15年間に76の戦 場へ行って9冊の本出して、バグパイパーとしては、5年間で約460回のライ ブ(ゲリラライブ含めると約740回)をやっていても、ぜんぜん有名になれな いんだから・・・。