ヒマヒマなんとなく感想文|出版関係のトピックス

「ニッポンの国境」西牟田靖/光文社新書




 他の誰も書けない名著「世界殴られ紀行」の著者、西牟田靖氏の出した、日本 の領土問題を分析する本。人気獲得を狙う論客さんたちは、白黒ハッキリした論 調を好んで使いたがるが、現実は、白黒ハッキリが必ずしもよいわけではなく、 未解決のまま棚上げ先送りもありのようだ。そういう点でも、この本で書かれた 現実は、これまた短気な愛国者が殴りたくなるモードかもしれない。

 今、日本で忘れられているのは、第二次大戦のような大きな戦争に敗北した日 本に、戦勝国と対等な発言権はないということ。あまり戦争というものを軽く見 過ぎないほうがいい。

 西牟田靖の見た日本の領土問題は、わかりやすいキーワードで滑舌良く演説し てヒーローになりたい人からは、最も嫌われる内容かもしれない。しかし、そん な嫌われることをズルズルとしてきたのが我らのニッポン。尖閣諸島へ渡航チャ レンジする中国人にも会い、竹島へ上陸する韓国の愛国者とも行動をともにした のが、殴られ西牟田の流儀。殴られたくない人にはなかなかできないね。

      (加藤健二郎)

西牟田靖の名著「世界殴られ紀行」


続く