ヒマヒマなんとなく感想文|

球界の野良犬−愛甲猛

(加藤健二郎 2014.8)


 横浜の不良世界でほぼ同世代愛甲氏と直接の面識はないが、要所要所のタイミングで、噂を聞くことがあったり、テレビで見たりで、なんらかの影響を受けてきた。横浜高校を嫌ってた不良も野球なんかに関心ない不良も、なぜか熱くなった1980年夏の甲子園、喧嘩屋兄弟が 住む一軒家 のテレビ前に呼び出されるように集まったのが青春の思い出。

 暴走族やめたあと人生成功してる者は、横浜には何人もいるが、愛甲氏は、不良やってるのと同時進行で甲子園のヒーロー。この違いは、不良君視点からは大きい。カトケンは中学3年というハンパな時期に横浜へ転校し、友人の多くが不良で占められ、中途半端に横浜不良界での戦々恐々な日々。

 それから30年以上を経て、映画関係者から「愛甲は凄い。今だに不良な生き方してるよ」と教えられたのが、本書との出会いのキッカケ。意外だったのは、愛甲氏が努力型だったこと。そうでない噂が広がっていたので、横浜のウダツの上がらない不良たちは愛甲に嫉妬していた。その嫉妬をうまく描 いたのが「サムライ教師ボギー」。これはなぜか、会津VS横浜。



 愛甲には野球界からチヤホヤされて生きようという甘えた根性がないがゆえに、ビシバシと書ける痛快な内容が散りばめられている。そこが、ちゃんと不良続けてるなあ、と1970年代横浜を懐かしく感じた。

 ドーピング開始の動機や後遺症。カトケンは、戦場へ出る前に受けた近視矯正手術の後遺症で健康バランスを崩した人生に転落してるので、ちょっとはわかる気がする。目標に突っ走るタイプだからこそ、リスクを承知で身体に小細工くらいしてしまう。自分の肉体の強靭さを過信していたからかもしれない。さて、人生後半戦はどう突っ走ろかね。まだまだ残りの人生長いかもよ。


続く