ヒマヒマなんとなく感想文|

VW「偽りの帝国」熊谷徹著

(加藤健二郎 2016.10)



 フォルクスワーゲンが排ガス不正へ突き進んだ真相に、帝国的な社内体質やトップ像へと斬り込む。

 本書内には書かれてない内容だが、感じたのは、「ものづくり」を身近な人間関係より愛するエンジニア魂の塊さんたちによる突撃型の前進前進思考。VWは、ポルシェ家の直系なので、技術屋としてのトップが会社のトップでもある。そのためか、一度、突き進むとブレーキがかからない危険があるようだ〜ブレーキがかからない理由は、書籍内にもろもろ。

「米国自動車市場を席巻」という目標に向かって、手段を選ばない〜目的のためなら独断専行。

 目標奪取のために驀進するドイツ軍が、ヨーロッパ全戦線の戦況を考慮せずにモスクワやスターリングラードを目指した民族性を感じた。

 その専門分野において優秀すぎた者が組織のトップに立つと下から上へのボトムアップ意見具申がしづらくなる。
「ものづくり」精神尊敬を基盤としたドイツにありがちな暴走リスクなのだろうか。

「ものづくり」愛は、その製品を買ってくれる「人間」よりも自社製作の「良い物」への愛が強くなるのか。今回のVWの排ガス不正は、車を買う米国民の求めよりも、自社の自信作への愛を優先したともいえる。

 ヨーロッパと米国では、排ガス規制法で重視する点が違う。VWの自信家たちは、米国人を田舎者と舐めてかかったとの見方もある。この姿勢も、物への愛が、人間(購買者)への愛よりも強かったこととリンクするだろうか。


続く