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映画「花と兵隊」




 現地に残った元日本陸軍兵士たちの現在を追った映画である。インパール作戦 の突進部隊にいた兵士、シンガポールでの華僑処刑命令を実行した兵士。ビルマ やタイに残った彼ら日本兵が、その後の人生、ビジネスでも成功し経営者となっ ていたり、技術者として現地で活躍したりしているなど、「日本人は優秀だ」を 実証する生き方を見せてくれていた。現在の日本人のほとんどは、経済大国日本 という後ろ盾ナシで人間力だけの勝負で、発展途上国でこれほど勝ち残れる優秀 さは持ち合わせていないかもしれない。

 当時、日本陸軍の兵士として、インパール作戦のような最前線へ投入された者 は、日本男児の中でも、頭脳、体力、精神ともにトップクラスの者たちだった。 そして、最前線へ投入された優れた者たちから順番に死んでいっていて、生き 残って戦後の日本を復興させたのは、第一線に立てなかった者たちだといわれて いる。学歴の序列でも、陸軍士官学校、海軍兵学校の下に東大、京大と続く帝国 大学があったという。

 日本男児のトップクラスの人間が、何十万人も戦死し餓死していった。その トップエリートの中の生き残りたち、豪快な生き方をしてきた日本人たちの素顔 を追った映画である。戦史を知る者なら、インパール作戦の最前線まで突進し、 生きて退却してこれただけでも、ズバ抜けた体力の持ち主であることがわかるだ ろう。ヒマラヤの未踏峰をアタックする現代の登山家たちでも「インパール・コ ヒマからの撤退路を、あの環境で生きて歩き通せないとおもう」という。

 この映画「花と兵隊」を、映画評論家の多くが「戦争」をテーマにした映画と して論じたらしいが、私の感想としては、これは戦争をテーマとしたものという 気はせず、自分の意思で人生方向を決め、日本政府の世話になんかならずにサバ イバルし成功した人たちのストーリーである。戦争は、彼らの人生の中のキッカ ケにすぎないという描き方と感じた。こういう、おじいさんたちの生き様を知っ てしまうと、やはり、戦前戦中までの日本人に比べたら、自分たち戦後生まれの日 本人は、同じ民族とはおもえない劣等民族だ。自分が、甲種合格できなかった日 本人の側であることを実感させられた。甲種合格のたくさんの日本人たちが、日 本を捨て、密林の奥地で自分で決めた人生を全うしている。

 そして、彼ら甲種合格の男たちが戦争から得た人生観を語るのを聞くと、日本 人は、精神的にもう戦争で他国には勝てない国なんだということも感じる。今の 日本で、甲種不合格の二流日本人たちが、どんなに威勢のいいこと叫んだところ で、日本はもはや精神力の強い強国にはなれない。
                                    (加藤健二郎)