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小泉首相の靖国参拝中止をめぐる疑惑 1

(報告:常岡千恵子)


 2005年8月15日、あれほど盛り上がった小泉首相の靖国神社参
拝が中止された。

 この参拝中止については、靖国問題を選挙戦の争点にしたくない、中
国や韓国との関係をこれ以上悪化させたくない、との判断が働いたと推
測するのが一般的だろう。

 ところが最近、この推測を覆し、実は米政府にコビを売ったのではな
いかと考えさせられるような文書を、ウェブ上で発見した。

http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/07/20050728-3.html

 そう、2005年7月28日の、ホワイトハウスにおけるマクレラン
大統領報道官による記者ブリーフィングの議事録である。



 "Press Briefing by Scott McClellan"の下にあるメニューの
"Highway Bill"をクリックし、下にスクロールすると、非常に興味深
い質問に出くわす。

。。。。。。。。。。。。。

スコット・マクレラン大統領報道官の記者ブリーフィング

           2005年7月28日
           ジェームズ・S・ブリーフィング・ルームにて



Q: 大日本帝国の降伏60周年まで、あと2週間だ。今朝『ワシント
ン・タイムズ』が、一部の歴史家がベルリンのナチス・ドイツの聖堂
のようなものだとたとえている、東京の靖国神社について詳細を報じ
ている。
そこで質問だが、(ブッシュ)大統領は、小泉首相が8月15日に
 東條英機と絞首刑に処された13人の戦犯を参拝しないほうが、賢明 
 で正しいと信じているか? それとも、私たちは、バターンの死の行
 進を忘れようと努めるべきなのか?
 
マクレラン: レス、あの地域は、この問題に関し、確かにそれなりに
敏感だと思う。これ以上のコメントは差し控える。大統領は小泉首
相と良好な関係を持ち、友情を評価している。

Q: 彼は、彼がこれらの日本の戦犯と関わるべきではないと考えてい
ないのか? 

マクレラン: 今言ったように、私は、ただもう、これ以上のコメント
はしない。

。。。。。。。。。。。。。

 な、なんと、靖国騒動は、ホワイトハウスにまで到達していたのであ
る!!!

 米国人の常識では、やはり日本の首相の靖国神社参拝は、受け入れが
たい行動なのだが、日米同盟を推進する米政府の報道官としては、小泉
首相を批判するわけにもいかず、なかなか苦しい答弁。

小泉首相の頑迷さは、唯一の同盟国、米国の政府にまで迷惑をかける
にいたった。

 とすると、小泉首相が靖国参拝を中止した理由は、選挙への影響でも、
中国と韓国への配慮でもなく、実は米政府への配慮だったのではないか
という疑惑が浮上する。

 とくに、衆議院解散後は、支持率も急上昇し、靖国参拝への支持も上
がっていたことを考えあわせると、どうもクサイ。

 それにしても、こんなに大切なことを、日本国民に知らせない日本の
大手メディアは、完全にチェック機能を停止し、戦前のように日本国民
を妄想に駆り立てようとしているとしか、思えない。

 各社、ワシントンにはエリート記者を送り込み、しかもホワイトハウ
スの記者ブリーフィングで、日本が話題に上ることはそう多くないから、
このやり取りを逃すはずはない。

 ホワイトハウスが、ブリーフィングの内容を堂々とサイトに公開して
いるところからすると、この黙殺は、日本の大手メディアによる自主規
制か、日本政府の圧力によるものとしか、考えられない。

 きっと、日本の大手メディアのエリート記者たちは、小泉首相ととも
に日本を動かす支配層として、日米関係に及ぼす影響を懸念し、米国人
の靖国観を日本国民に知らせないように配慮したのであろう。

 そして、小泉首相がここまで米政府のポチであることを、隠蔽したか
ったのかもしれない。
 悪役は、中国と韓国にお任せ、てな感じで。

 その真相を、ぜひとも日本のエリート記者さまたちにお伺いしたいも
のだが、彼らは国民から搾取して出世街道を驀進することばかりにご執
心と来ているから、決して教えてはくれないだろう。

 ところで、前回は2005年6月末までの、中国と韓国以外の大手海
外英文メディアの靖国神社についての主な報道をご報告したが、靖国
神社や日本の戦争責任を追及する海外メディアの報道は、その後
も2005年8月20日前後まで、どんどん増え続けた。

続く