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小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 10

(報告:常岡千恵子)


 さて、2005年12月7日、麻生外相が内外メディアに向けて、記
者会見を行った。

 麻生氏の会見がどう海外(中国と韓国を除く)に伝えられたか、一部
の報道の要約をご紹介する。
 外相が、いかに日本のイメージアップに努めてくれたか、そのお手並
みを吟味いただきたい。

 麻生大臣の演説にご興味のある方はこちらを参照↓
 (質疑応答が掲載されていないのが、残念!!)
日本語 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/17/easo_1207.html
英語 http://www.mofa.go.jp/announce/fm/aso/speech0512.html

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『ロイター通信』(英)         2005年12月7日配信
     −日本の麻生;歴史がアジアの絆を妨げてはならない


 水曜日、日本の麻生外相は、日本は過去に中国と韓国に与えた苦痛を
自省すべきだが、歴史が未来の絆の障害になるべきではない、と述べた。

 彼は、中国と韓国は、第二次世界大戦後の日本の軌跡に注目すべきで、
日本が平和への願いと過去の過ちを繰り返さないことを表明してきた
60年間の行動について語った。

 中国と韓国では、第二次世界大戦前後の日本の侵略に対する憤りが、
今も尾を引いている。
 日本は1931年から1945年まで、中国の一部を侵略・占領し、
1910年から1945年まで、朝鮮半島を植民地化した。

 麻生氏は、「私のアジア戦略」と題するスピーチの中で、韓国を"頼
もしいパートナー"と描写し、中国の経済的競合者としての出現を歓迎
した。

 小泉首相の後継者候補と目される麻生氏は、過去の克服の必要性を訴
え、中国に軍事費と軍事行動の透明性を求めた。

 日本と中国・韓国との関係は、小泉首相が毎年行っている靖国神社参
拝によって、緊張してきた。

 麻生氏は、すでに中国政府と韓国政府を苛立たせている強硬姿勢を維
持し、小泉首相に、戦犯が250万人の戦没者とともに祭られている靖
国神社の参拝を中止するよう助言しないとも語った。

 彼は記者の質問に対し、「中国や新聞に言われたからやめるというの
は一国の首相としてやるべきではない」と答えた。

 彼はまた、別の会見で、「アジアの国は中国と韓国だけではない」と
述べ、日本政府とほかのアジア諸国の関係は、「きわめて良好」とした。

 日本とアジアの近隣諸国の冷ややかな状況は、今月、中国が日中韓首
脳会談の見送りを言明したことで、強く示された。

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『AP通信』(米)           2005年12月7日配信
     −日本の外相、戦争神社参拝を擁護

 日本の麻生外相は、水曜日、中国と韓国が激しく批判している、首相
の戦争神社参拝を擁護した。

 今週、アジアの閣僚やリーダーたちのミーティングに出席するためマ
レーシアに出発するが、中国や韓国の外相との個別会談は行えそうにな
い麻生氏は、「祖国のために貴重な命を捧げた人たちに、最高の栄誉を
与えることを禁じる国はない」と述べた。

 小泉首相が毎年、戦犯を含む戦没者を祭った靖国神社を参拝している
ことが、第二次世界大戦前とその最中に日本兵の残虐行為に苦しんだ、
中国と韓国を怒らせている。

 小泉氏は、参拝は日本の戦争放棄を表すものだと弁解し、日本は第二
次世界大戦後、60年間、戦争を行っていないことを再三指摘した。

 麻生氏は、過去についてみんなが合意することはないとし、米国の南
北戦争について、南部の人たちは北部の人たちと違う見解を持ちやすい、
と付け加えた。

 麻生氏は、中国と韓国だけが「アジアの国ではない」と述べ、アジア
における日本の役割についての懸念を振り払った。

 靖国神社参拝の常連で、今後も続けると公言する麻生氏は、「日本は
ほかの国とは非常に良好な関係を持っており、すべて順調だ」と語った。

 日本とアジアの経済的関係は成長しているが、中国との関係は、小泉
首相の靖国参拝で、過去数十年間において最悪に落ち込んでる。
 アジアの国々は、小泉首相の参拝を、日本の過去の軍国主義復活の野
望のシンボルと見ている。

 麻生氏は、戦争は韓国や中国だけでなく、日本人にも苦痛を与えたと
語った。

 彼は、「日本が、隣国として、これからも深い反省の精神と思慮を維
持することは必要だと確信する」と述べ、「しかし同時に、韓国と中国
の人々も、この問題を、日本が過去60年間歩んだ道の全体的な文脈の
中でみてほしいと強く望む」と語った。

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 上のAP電は、淡々と麻生氏の発言を伝えているが、一般米国人の読
者が一読して違和感を抱く内容が含まれているので、捕捉しておきたい。
 これらの発言は、主観的な解説なしで引用されているが、一般米国人
にとっては、それを読んだだけで呆れてしまうものだからだ。

 まず、米国の南北戦争を日本の戦争責任問題と比較することは、一般
米国人にとっては考えられない発言であり、"非常識"の範疇に入る。

 さらに、あの戦争では、中国や韓国だけでなく、日本も苦しんだとい
う発言は、加害者としての反省を疑われてしまう。

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『ニューヨーク・タイムズ』(米)     2005年12月8日付
     −政府高官が、日本は戦時の行動への"深い反省"を示さなければ
          ならないと発言



 日本が第二次世界大戦の歴史をめぐって国際的孤立に直面している
なか、日本の外相は、演説の中で、日本が戦時の行動への"深い反省"
を示さなければならないと述べた。

 ナショナリズムの復活に押された麻生氏などの日本の指導者たちは、
近年、虐殺・強制労働・性的奴隷を含む、中国や朝鮮での戦時の残虐行
為を、過小評価してきた。
 小泉首相は、戦犯を含む日本の戦没者を祭った神社を毎年参拝すると
主張し、日本の近隣諸国をかなり苛立たせてきた。

 2週間前、麻生氏はこの神社の問題について、「これを問題にするの
は韓国と中国だけだ」と退けた。

 しかしながら、米国人が1941年12月7日の真珠湾攻撃の記念を
準備中の水曜日の演説で、麻生氏は、日本人は日本の軍国主義とナショ
ナリズムが「韓国や中国をはじめとするアジアの国々で無辜の民を苦し
めた」ので、日本人は「引き続き謙虚な反省の念をもって臨まなくては
ならない」と述べた。

 外相は、この融和的発言を、小泉首相が日本の首相としてかつてない
孤立に陥りそうなリスクを負った地域サミットに出席するため、マレー
シアに発つ準備を進めているときに行った。

 中国と韓国の外交官は、この新しい緊張が小泉首相の靖国参拝に起因
していると、無愛想に語った。
 神社には、日本の軍事拡張は、東南アジアを欧米支配から解放し、中
国と韓国を発展させるための努力だったと示す博物館が付随している。

 以前は口を閉ざしていた米国も、小泉首相の10月17日の参拝以降、
反対を唱えるようになった。

 (参拝)3日後、ヘンリー・ハイド下院外交委員長が、日本の加藤良
三駐米大使に、抗議の手紙を送った。

 1944年に海軍に入隊し、南太平洋でフィリピンの戦闘を経験した
ハイド氏は、件の神社は、「第二次世界大戦中の残虐行為と、太平洋戦
争中に示された軍国主義をめぐる解決されない論争のシンボル」となっ
たと記した。
 「また、靖国神社には第二次世界大戦の戦犯も祭られている。日本政
府の人間がこの神社を繰り返し参拝することに、心穏やかではない」。

 米国の多くの政府関係者やアナリストが、過去の残虐行為を糊塗する
傾向を強めている日本がこの地域で孤立し、アジアの支配勢力として中
国が台頭し、米国が(この地域からの)退去させられるようになる、と
懸念している。

 ハワイの戦略国際問題研究所・太平洋フォーラム所長ラルフ・コッサ
氏は、水曜日に発表したインターネット上の論文で、「米国がこの問題
について発言しないことで、とくに東アジアのもうひとつの鍵となる同
盟国の韓国からの、米政府に対する反感が強まった」と書いた。

 コッサ氏は、小泉氏は参拝を中止する一方で、中国と韓国と日本の指
導者たちが、相互に受け入れられる20世紀前半のアジアの歴史教育を
行うため、歴史教科書について合意を形成すべきだと、示唆した。

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『ジ・オーストラリアン』(オーストラリア) 2005年12月8日付
     −戦争について、日本の中国への教訓


 日本有数のナショナリストかつ次期首相候補の麻生太郎氏は、日本は
中国に対して、いかにして過度なナショナリズムを回避するかを教えら
れる、と発言した。

 外相に指名されてから6週間後の華々しい演説で、麻生氏は、日本は
日本の過ちや成功を教えることによって「アジアの実践的先駆者」とな
りえる、と述べた。

 65歳の外相の野心、かねてからの対中強硬発言、そして最近、中国
と韓国からの小泉首相の靖国神社参拝への苦情をはねつけたことなど
で、この演説には強い期待が寄せられていた。

 小泉氏の10月の靖国神社参拝がこの地域で激しい論争を呼んだに
もかかわらず、麻生氏と安倍官房長官は、靖国神社参拝を続けると述べ
た。

 靖国問題のせいで、中国と韓国の首脳は、東アジアサミットで小泉氏
と3者会議を開くことを拒否した。

 この3者会議が開かれないのは、1999年以来、初めてのことであ
る。

 昨日、麻生氏は、「中国や新聞に言われるからやめるというのは一国
の首相としてやるべきではない」と、小泉首相を再び支持した。

 しかしながら、麻生氏は、巨大な隣国を名指しすることは避けつつも、
中国は、1910年から1945年の間に日本を中国や韓国やその他の
アジア諸国の侵略に導いた、過度のナショナリズムから学べるところが
ある、と主張した。

 麻生氏は、1950年代と1960年にも、日本が過度のナショナリ
ズムのリスクを負った、と述べた。

 麻生氏は再び、明らかに近代中国をほのめかしながら、このとき日本
を「ナショナリズムの偏狭」から救ったのは、言論の自由と民主主義的
議論だと語った。

 中国の、日本の過去の残虐行為に向けられた国民的ナショナリズムは、
とくに4月の反日デモが行われて以来、隣国の日本では深刻な懸念とな
っている。

 日本の指導者たちは、この暴動は少なくとも中国当局が許可したもの
だと見ている。

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 上のオーストラリア紙は、ナショナリストがナショナリズムの回避に
ついて説教?!って感じかな。

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『シドニー・モーニング・ヘラルド』(オーストラリア) 
                                     2005年12月10日付
 −アジアの閣僚級会議で、日本がいかにほかの国より対等かを説く日本
    分析:麻生からの、あまりにも盲目的で極端に楽天的な時間

 工場が建設され、ロボットと人間の生産コンボイの準備が整った。
 数日のうちに、日本最大の企業、トヨタが、中国で新たなベンチャー
に着手する。

 世界一未来的なクルマ、プリウスが生産ラインを通過し終えるときに、
まず最初にこれを祝うのは、日本の新外相である。

 需要拡大中の日本は、中国でトヨタの工場を通じて雇用を創出し、ア
ジアの楽観主義を焚きつけ、自動車業界のビジネスのノウハウと先進的
技術の有能さを伝えた。
 ズバリいうと、日本は前線に出て、中国は日本から学ぶものがある、
ということだ。

 麻生氏は、危険なパワーゲームに没頭するライバル同士の二国は、友
好的な競合者にある必要がある、と述べた。

 だが、彼は日本を"対等の仲間"と呼びながらも、日本は地域のリー
ダーだと主張した。

 麻生氏は、次の課題は、日本がどのようにしてその力を発揮するかだ
と述べた。

 寛大な日本が政治的・社会的・経済的な問題について指揮するという
ビジョンは、時代と一致しがたい。
 今日の日本は、最も近い国々とほとんど言葉も交わさない状態である
ばかりか、最も親密な同盟国の米国からも、罰点を授けられている。

 最近、ヘンリー・ハイド米下院外交委員長が、日本の駐米大使に、
10月の小泉首相の靖国神社参拝を非難する書簡を送った。

 ハイド氏は、靖国神社を「第二次世界大戦中の残虐行為と、太平洋戦
争中に示された軍国主義をめぐる解決されない論争のシンボル」と記し
た。

 ナショナリストで靖国神社参拝者である麻生氏は、日本は独自に戦没
者に名誉を与える権利があるとし、ハイド氏とは異なる見解を持つ。

 とはいえ、彼は韓国政府と中国政府に謝罪し、日本が「謙虚な反省の
念」を持ち続けることが必要だと述べた。

 麻生氏の演説は、今後の日本の戦略・外交のアウトラインだとみなさ
れているが、あまりにも盲目的で極端に楽天的なフシがある。

 麻生氏には、不誠実に謙虚さを装ったそぶりはない。
 ワシントンでライス米国務長官と対談したばかりで、日本経済につい
てのよいニュースに励まされた彼は、自信をみなぎらせた。

 彼は、この地域のリーダーたちに、1998年から1999年の経済
危機で彼らを救ったのは日本政府であることを思い起こさせ、現在、彼
らの安全保障も日本に依存していると注意を喚起した。


続く