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ロシア軍全面協力映画の見方




大統領のカウントダウン
「大統領のカウントダウン」パンフレット


 この映画の宣伝文を東長崎機関に依頼してきたというだけでも、この映画配給 会社「シナジー」は、ロシアの国策映画というものをよくわかっている。まず、 東長崎機関メンバーたちは、この映画に登場する人物の元となる人たちに実際に 会っている。少なくとも4人くらいには会っていることになろうか。そして、戦 争をテーマとした国策映画の解説に関しては、やはり、政治思想ゼロの東長崎機 関が最適ということになろう。チェチェンについてもロシアについてでも、よく 勉強して知っている専門家たちは、どちらか側に感情移入してしまっていること が多いようだし。

「感情移入や偏見のある人に国策映画を語らせても、肩に力が入りすぎた、疲れ る文章になりがち」ということを配給会社はわかっていたようだ。

 チェチェンを悪者にするための自作自演との疑いをもたれている爆破事件があ る。その事件を疑惑を含めて形で映画は始まっている。これは第2次チェチェン 戦争を遂行する上で重要な役割を担った事件である。

 そのような実在する疑惑事件の扱い方などから「ロシア政府は、何を訴えたい のか」が見えてくる。つまり、政府の意図や今後の方針が見えてくるから国策映 画はおもしろい。映画を作品としてしか観たくない人には、国策映画のおもしろ さは感じ取れないであろう。また、「ロシア政府けしからん」という政治ポリ シーを持っている人にとっては、ちょっと感情穏やかではいれない映画かもしれ ない。
大統領のカウントダウン パンフレットの宣伝解説文では、映画のストーリーや仕掛けを暴露しないよう にしつつ、実際のチェチェン関連のできごとの裏と映画ストーリーがリンクして る部分を想像させるような書き方をした。そんな「想像を喚起する」書き方のた めチェチェン戦争に詳しくない人にとっては歯切れが悪い文章になってしまっ た。歯切れ良く書くとどうしてもネタばらしになってしまいそうで。しかし、歯 切れが悪いのがロシア国策映画の魅力だとも思っている。

 ロシア人というのは国のトップでさえも、おそらく自分たちのやってることが あまり正しくないということ、自分の国が他国と比べて幸せな国なんかではない ということを十分に認識しているのだろう。そんな 後ろめたい気持ちを持ちつ つ作った国策映画ってか。「我々は正しい」という自信と正義心に満ちて堂々と 明るく戦争を仕掛ける米国と比べて、どっちがお好み?