インフラ海外拠点イラク

大手英米メディアの自衛隊報道8

(報告:常岡千恵子)


2005年1月7日金曜日、大野防衛庁長官が、重大発言を行った。

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AP通信(米)  2005年1月7日配信
−日本の防衛トップが、イラク展開の不人気は広報の問題だと発言 


日本の親米政府は、先月、サマワでの1年間の人道支援活動を、12ヵ 月延長した。 大野防衛庁長官は、金曜日の記者会見で、「延長は、非常に不人気です」 と認めた。 彼は、「日本国民の目には、サマワの状況はとても悪く、危険に映る。 これは、広報の問題です」と語った。 多くの日本人は、自衛隊が戦闘に巻き込まれたり、日本がテロの標的に なることを恐れている。 世論調査では、日本の有権者の60%が、延長に反対した。 また、反対派は、自衛隊の(イラク)展開は、日本の平和憲法を侵害す ると主張している。 先月、サマワの自衛隊宿営地を訪れた大野長官は、現地の状況は安定し ており、現地のイラク人たちも自衛隊の活動を歓迎していると発言した。 彼は、サマワ視察に記者を同行させなかったことを後悔していると述べ、 さらに、国民に現地の状況をよりよく理解してもらうために、日本の(自 衛隊)宿営地にメディアを入れる可能性を模索中である、と語った。 。。。。。。。。。。。。。。 『フィナンシャル・タイムズ』(英) 2005年1月8日付 −格上げを目指す日本の防衛庁 昨日、日本の防衛庁長官が、防衛庁は年内に防衛省に格上げされるかも しれないと述べ、防衛庁が日本の安全保障上の課題において、より大き な役割を果たすことができる、との自信をのぞかせた。 米国が起草した平和憲法下で、軍隊に等しい存在の自衛隊を統括してい る防衛庁は、第二次世界大戦後、省のステータスを奪われた。 失われた力を奪回するためのいかなる試みも、近隣諸国、とくに中国の 不信を招くことになろう。 また、外務省をはじめとする、日本の他省庁との摩擦につながる可能性 もある。 大野氏は、小泉首相が彼を大臣(注:厳密には、大野氏は"長官")に することを支持するとほのめかした、と述べた。 大野防衛庁長官は、財務省との予算折衝における勝利を自慢しながら、 彼の影響力が拡大しているとほのめかした。 彼は、財務省は15万人の陸上自衛隊員を12万人に削減することを望 んでいたが、防衛庁はわずか2000人の削減ですんだ、と語った。 大野氏は、日本は軍隊に強力な文民統制を敷き、平和国家であり続ける、 と述べた。 また、彼は、軍隊のアカウンタビリティを促進するため、イラクの自衛 隊の活動を取材しやすくするよう尽力する、と語った。 昨年4月以来、日本人ジャーナリストは、自衛隊の宿営地への立ち入り を禁止されており、日本政府は、戦後日本最大かつ最も議論を醸した展開 に関する、メディアによる独立した報道を封殺している、との批判を招い ている。 。。。。。。。。。。。。。 なんと、大野長官は、記者会見という公の場で、自分のサマワ視察に記 者を同行しなかったことを悔いていたのである! しかも、今後サマワ取材が可能になるよう尽力する、とまで公言してい るのだ。 ところが、なぜか、わが5大全国紙は、大野長官の重大発言を完全無視。 さらに、件の記者会見を報じた英文の共同電を読んでみると、これまた 面白い。 。。。。。。。。。。。。。。。 英文共同通信(日) 2005年1月7日配信 −大野防衛庁長官が防衛庁の格上げを要求 日本の大野防衛庁長官は、防衛庁の省への格上げを強く求めた。 彼は、日本外国特派員協会での記者会見において、英語で「今年はトリ 年なので、雄鶏が『庁から省へ変われ、変われ』と声高に鳴いてくれるよ う願っています」と語った。 彼はまた、米軍再編問題について、2月に日米間で協議が行われること を示唆した。 防衛庁の格上げの声は、自衛隊の任務拡大に伴い、タカ派議員の間で高 まっている。 小泉首相は、水曜日に、格上げには反対しておらず、連立与党や第一野 党と調整したい、と述べた。 しかしながら、防衛庁の省への格上げは、日本の軍国主義に苦しんだア ジアの近隣諸国を苛立たせることになろう。 。。。。。。。。。。。。。 上記の要約は、いずれも全訳ではないが、英文共同電の原文には、自衛 隊の広報に関する記述は、いっさい見当たらない。 一方、庁から省に格上げしたいという発言は、いわば防衛庁のピーアー ルである。 権力の野望のみを宣伝し、都合の悪いことは隠蔽するという、日本の大 手メディアの臆病かつ卑怯な体質を露呈した一例といえよう。 現に、日本の新聞社には、サマワからの現地報道を求める読者の要望が 寄せられているのだ。(こちらを参照)  その件に関し、いやしくも一国の閣僚が解決に向けて尽力すると公言し たにもかかわらず、これを黙殺するとは、読者をナメておるのか!! さらに由々しきことには、大野長官の重大発言は、英米メディアによっ て、すでに世界発信されているのである。 知らぬは、日本国民ばかりなり。 "黙殺"が得意なのは、日本政府だけかと思っていたら、その"お友達" である日本のメディアも、なかなかやってくれる。 世界に流れた重大発言を"黙殺"すればどういう事態を引き起こすか、 60年前のポツダム宣言の悲劇を、よもや忘れたわけではあるまい。 日本のメディアよ、オ・マ・エはもう、死んでいる……?


続く