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自衛隊を迎える国連PKOの実態 1

(報告:常岡千恵子)



 2004年12月、自衛隊の本来任務を、本土防衛から海外派遣に軸足
を移すと明記された、新しい「防衛計画の大綱」が発表された。

 これを受けて、"中央即応集団"が新設されることになり、2005年に
入ってその準備が着々と進められている今、日本の大手メディアが、
海外派遣の目玉の国連PKOの現状を報じることは、あまりない。

 そこで、海外メディアに目を向けてみると、驚きの実態が浮かび上がっ
てきた。
 その要旨をお伝えする。

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『ニューヨーク・タイムズ』(米)   2005年5月23日付
     −平和を確保するために、より激しい戦術を駆使する国連軍

 1994年にルワンダでの大量殺戮を防ぎきれず、ボスニア、ソマリア
のPKOでも失敗した国連は、PKO史上、最も攻撃的な作戦を許可して
いる。

 この変化は過去10年の間にもたらされた。
国連安保理が、ブルーのヘルメットを被った兵士を紛争地に送るだけと
いう発想を捨て、"強靭な平和維持活動"という概念を取り入れたのだ。

 その最も顕著な例がコンゴで、世界中で最も多くの国連の兵士たちが展
開している。
 イツリ地方の東部では、デコボコの泥道を走る、平和維持軍兵士を乗せ
た装甲車を、スナイパーが狙う。そして、平和維持軍兵士たちは、銃を撃
って反撃する。
 攻撃ヘリを森の上で低空飛行させて、部族の戦士を探す。
 そして、平和維持軍兵士たちは、武装勢力の本拠地で村落を包囲し、一
軒一軒回って、銃を探し回収する。

 国連平和維持活動局のトップ、デーヴィッド・ハーランドは、「国連や
安全保障理事会が、イツリの対処を選択したが、これにはルワンダの亡霊
が重くのしかかっている」と述べた。

 2000年に、シエラレオネで、平和維持軍兵士が殺害されて、多数人
質にされたことが、転換点となった。
 国連は再検討を行い、平和維持活動軍の迅速な展開を求める報告書をま
とめた。

 ハイチの平和維持軍も、兵士や市民を守るために武力を行使している。
 リベリア、シエラレオネ、コソボ、ブルンジ、アイボリー・コーストの
平和維持活動は、それぞれ独自の交戦規定を持ち、従来の平和維持活動
を超えている。

 だが、最も深刻な問題を抱えているのはコンゴで、人権擁護団体が市民
の被害を訴えた。

 コンゴでの平和維持活動は、1999年に控えめなオブザーバー任務と
して開始された。
 それが現在、兵士16500人を擁する活動に膨らみ、それでも尚、ニ
ューヨークの国連関係者は、人員不足だとみなしている。

 1990年代に多くの失敗を重ねた後、欧米諸国は、(PKO)海外派
兵規模を著しく縮小した。
 1998年には、平和維持軍の45%が、欧米諸国の軍隊から派兵され
ていたが、現在は10%以下に落ち込み、大多数が発展途上国から派兵さ
れている。
 
 コンゴでの平和維持軍のほとんどが、インド人、パキスタン人、バング
ラデシュ人、ネパール人で占められている。

 イツリでは反乱を根絶させるために、東部の国連兵士たちは、戦車、装
甲車、攻撃ヘリ、迫撃砲などを多用している。

 コンゴの国連軍司令官、セネガルのゲイ中将は、「戦争のように見える
かもしれないが、これは平和維持活動だ」と語った。

 3月に、バングラデシュ人平和維持軍兵士9人が待ち伏せされて殺され
た後、国連軍は、反乱者たちを根絶するためにロガ付近の混雑したマー
ケットを急襲した。
 
 彼らの敵対者は、4月1日の武装解除期限を無視した。
 その後、国連が厳しい態度を取るようになると、多くの部族戦士たちが
武装解除した。
 国連は、イツリには15000人の反乱者がいたと推定していたが、そ
のうち、14000人が武器を放棄した。
 だが、武装解除を拒んだ者たちは激しく抵抗し、降伏する気配はない。

 2月に、武装勢力が、難民キャンプ周辺を徒歩でパトロールしていた
バングラデシュ人平和維持軍兵士たちを襲い、兵士9人を殺し、その遺体
を切断した。

 5月12日には、再び、バングラデシュ人で編成されたパトロール隊が
待ち伏せされ、6人が負傷、1人が死亡した。

 コンゴの国連平和維持軍は、常に忠勇無双なわけではない。
 彼らは何年もの間、遠くで残虐行為が繰り返されても、宿営地に引きこ
もっている、と批判されていた。
 そして今は、攻撃的すぎるという批判がある。平和維持軍兵士による性
的虐待も、非難されている。

  人権擁護団体『ジャスティス・プラス』は、平和維持軍がロゴ付近のマ
ーケットを急襲した時に、市民数人が「命を犠牲にした。国連の命令は彼
らを守ることなのに」と嘆いた。

  一方、2年前に武装勢力間の戦場だったブニアを記憶している者の間で
は、タフなアプローチは賞賛されている。

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  意外にも、昨今の国連PKOは、こんなにもタフだった!!
  これでは、まさしく"戦闘行為"ではないか!!!

続く