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海外メディアの"靖国神社"報道 6

(報告:常岡千恵子)


 さて、次は、靖国神社をめぐる各国の思惑に踏み込んだ、米有力紙の記
事の要約をご覧頂きたい。

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『ニューヨーク・タイムズ』(米)     2005年6月22日付
     −日本の無罪判決を求める戦争神社
  最近、ある雨の日の朝、右翼団体の所有する数十台の自動車が、靖国神
社の境内に集結した。

  12時半になって、自動車はどこへともなく散開した。だが、彼らのタ
ーゲットは、いつもだいたい同じだ。中国大使館や、リベラルなメディア
など、日本の戦争が正しく指導者たちは戦犯ではないという主張に逆らう
者が標的にされる。
  靖国神社は、日本の軍国主義の過去を修正しようとする動きのシンボリ
ックな核であり、日本と近隣諸国の関係悪化の中心に位置している。
  現在、右翼の過激派だけでなく、主流派政治家やメディアも、靖国神社
に合祀されたA級戦犯は有罪ではなく、日本の戦争はそれほど悪いもので
はなかったと、よりオープンに主張している。

  靖国神社は多くの批判を受けているが、この神社と戦犯合祀の意味を改
竄しているのは、日本だけではない。
  中国も、台湾も、米国も、それぞれの国益のために同じことをしている。

  第二次世界大戦後の占領で、米国は当初日本を民主化し、戦犯を起訴し
た。
  その後、中国が共産主義国となり、冷戦の時代に入ると、米政府の逆コ
ースが、戦時の指導者たちを復活させた。
  A級戦犯容疑者の中には、戦後の政治指導者や大事業家になった者もお
り、その一人、岸信介は首相にまで上り詰めた。

  米国の曖昧なメッセージと、米国の決定により天皇ヒロヒトを巻き込ま
ぬよう高度に政治化された東京裁判は、日本の混乱の種を巻いた。
  米国は、日本人に、日本が侵略戦争を行ったという東京裁判の判決は不
当だったと主張できる可能性を残した。

  戦時の首相の孫、東條由布子氏は、電話インタビューで、「あれは自衛
戦争でした。中国は、侵略戦争をやって迷惑をかけられた責任者が祭られ
ている靖国に、一国の長が参るのは許しがたい、と言っています。でも、
中国に同意すれば、侵略戦争だと認めることになので、できません」と語
った。

  長年、靖国神社参拝は、彼女のような保守的な国家主義者の見解を、暗
に是認するものとみなされてきた。
  実際、約2週間前に小泉首相が東京裁判の有効性を認めると、日本最多
発行部数を持つ『読売新聞』が、「小泉首相は、いったいこれまで、どの
ような歴史認識、歴史観に基づいて靖国神社に参拝していたのであろう
か」と社説で問い、もし小泉首相が判決を認めているのであれば「靖国神社
に、参拝すべきではない」と付け加えた。

  靖国神社は、天皇を中心にした国家主義的宗教を作ろうとする動きの一
環として、1869年に創立された。
  ここに祭られている軍人は、2つの内戦以外は、すべて日本の中国と朝
鮮半島、台湾などへの進出、そして米国への攻撃などに関連した9つの戦
争で死亡している。

  靖国神社の博物館は、米国が恐慌を克服するために、日本に真珠湾攻撃
を強いたと主張し、「参戦によって、アメリカ経済は完全に復興した」と述
べている。
(注:遊就館は、展示に日本語と英語の説明をつけており、その内容が食
い違っていることがある。本記事の引用は、英語版の翻訳。)

  また、この博物館で上映している『私たちは忘れない』というビデオは、
戦後の米国の占領を「過酷」と表現している。
  だが、この博物館は、日本によるアジアの占領については、言及してい
ない。
  南京大虐殺については、中国の司令官を批判し、日本のおかげで「都市
の中では、住民が再び平和な生活を取り戻した」とある。

  靖国神社は、本紙の質問に対し、「展示は特別の歴史観によるものでは
なく、明確な証拠に基づいている」と書面回答した。

  台湾の独立・反中派の国会議員、シュ・チン・チャンは、4月に靖国神
社を訪れた。
  靖国神社には、台湾人の兵士も祭られている。

  最近、台北でインタビューに応じたシュ氏は、「各国とも、それぞれの
やり方で戦死者に敬意を表する権利がある」と述べ、多くの日本人がそう
するように、靖国神社を米国のアーリントン国立墓地にたとえた。

  台北の国立大学の国際関係専門家、アーサー・ディング氏は、シュ氏の
靖国神社訪問を、「日本に対しては、彼の政党が日本と親しくしたい、そ
して中国に対しては台湾を独立させたいというメッセージを送ったのだ」
と読み解いた。

  中国と韓国は、靖国神社を批判する正当な理由があるため、それぞれこ
の問題を利用して国民感情に訴え、国内の政権支持を強化していると非難
されている。

  特筆すべきは、米国が、靖国神社とA級戦犯の判決について沈黙を保っ
ていること。
  日本を破り占領し、いまなお50000人の兵士を駐留させている米国
は、これらの問題について、日本が耳を傾けるであろう唯一の国である。

  米政府関係者は、日本人が靖国神社をアーリントン国立墓地にたとえる
のを聞いて、驚かされる。
  だが、彼らは、多少のぎごちなさを伴いながらも、日本人の靖国神社参
拝を擁護するか、慎重に沈黙を守る。
  冷戦は終結したかもしれないが、米国は、中国の台頭を、1940年代
の共産主義の台頭と同様、警戒している。
  そこで、日本人が靖国神社や戦犯について何を言おうと、強くて再軍国
化された日本が好ましい、というわけだ。

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  中国や韓国の靖国問題をめぐる思惑は日本でもお馴染みだが、これに米
国と台湾の本音も絡めた、興味深い記事である。

  どうやら、本音では靖国神社の歴史認識にギョギョギョ!ときちゃう米
政府関係者も、国益のために我慢して口をつぐんでいるらしい。
  ま、本来、外交とはこんなもんなのだろう。中国や韓国にモロに敵意を
見せる今の日本は、ちょっと違うみたいだけど。

続く