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小泉首相、それでも靖国参拝?1

(報告:常岡千恵子)


 2005年9月11日の総選挙で、争点を郵政民営化一点に絞り、自
民党を歴史的圧勝に導いた、小泉首相。
 絶大なる権力を手にした小泉氏は、郵政民営化達成後に、日本をどう
動かそうとしているのだろうか?

 外交面で非常に危ういという英有力紙の指摘もある小泉首相だが、郵
政民営化を果たした暁には、靖国参りでもするつもりなのかもしれない。

 英有力紙の指摘↓
 ・大手英米紙の"ピリ辛"選挙戦報道 1

 ところが、2005年9月13日、米政府サイドから、婉曲な言い回
しながら、公式に懸念の声が漏れた。

 http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2005/53074.htm

 2005年9月13日に、米国務省の定例記者会見で、エレリ副報道
官が、小泉首相の靖国参拝問題について公式にコメントしたのだ。



 前回は、2005年7月28日のホワイトハウスの記者ブリーフィン グで、マクレラン大統領報道官がコメントを迫られた様子をご報告した が、今回のエレリ発言は、これより少し踏み込んだ内容。  2005年7月28日のホワイトハウスの記者会見のご報告↓ ・小泉首相の靖国参拝中止をめぐる疑惑 1小泉首相の靖国参拝中止をめぐる疑惑 2  尚、今回の発言は、2005年9月14日付『朝日新聞』夕刊3面で も報じられているが、米政府の靖国問題に対するスタンスが伺える重要 な公式発言と目されるので、『朝日新聞』読者以外にもぜひお伝えした い。 。。。。。。。。。。。。。 アダム・エレリ国務省副報道官の定例記者ブリーフィング                  2005年9月13日
     Q: 昨日も聞いたように、先日の総選挙で、日本の・・・(聞き取り  不能)民主党の・・・(聞き取り不能)。一部の人々、とくに、朝鮮、  韓国あるいは中国のような日本の近隣諸国の人々は、首相が再び、い  わゆる靖国神社を参拝するのではないかと懸念している。   この問題についての米国の考え、米国の立場は、どのようなもの  か?   日本の首相の靖国神社参拝を支持するか、それとも日本の首相の参  拝を好ましくないと見るか? エレリ: まず最初に、昨日ホワイトハウスが発表した声明の中で、  ブッシュ大統領が、小泉首相と自民党の選挙における勝利を祝福した  ことを指摘させてもらう。   また、ブッシュ大統領は、スコット・マクレランが今日のブリーフ  ィングですでに話したと思うか、ブッシュ大統領は小泉首相に電話で  祝福した。   あなたが取り上げた問題についてだが、米国の立場が、前世紀初め  と半ばに起きた恐ろしい出来事に関わったすべての国が、誠実、率直  に過去を評価する必要がある、というものであることは、よく知られ  ていると思う。   これは、すべての国が通過するプロセスだ。これは、誠実でオープ  ンな、歴史的な評価ということだ。   この地域は、明らかに、(この問題に)敏感であり、こういう感情  に注意して扱うことは、この地域の国々によってなされるべきだ。 Q: つまり、日本と中国と韓国が、一緒にこの問題について話し合う  べきだということか? エレリ: もう、これ以上は、踏み込みたくない。 。。。。。。。。。。。。。  公の場で意見を求められ、内政干渉ギリギリのところで踏みとどまっ た感のあるエレリ副報道官だが、そのメッセージは、こっちはあまり関 わりたくないけど、傷つきやすい国もあるんだから気をつけてね、って とこだろう。  東京裁判を主導した戦勝国という米国の立場を考えると、やはり日本 の首相に、東京裁判転覆を目論む神社を参拝されては、不愉快に違いな い。  しかし、幼稚な感情を抑えて、今後の日本との関係と国益を考慮し、 大人の対応をみせるところが、超大国の戦略的外交というものなのであ ろう。  前出の記者会見のやり取りには、「昨日も聞いたように」という気に なるフレーズが含まれている。 そこで、米国務省のウェブサイト上で、2005年9月12日のエレ リ副報道官の定例記者会見議事録を探ってみると・・・  http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2005/53012.htm 。。。。。。。。。。。。。 アダム・エレリ副報道官の定例記者ブリーフィング                      2005年9月12日
Q: ・・・(聞き取り不能)日本の選挙での小泉首相の勝利は、日米  関係の将来にどのような影響を与えるか? エレリ: 日本は、米国の緊密で価値あるパートナーだ。われわれは、  日本の前政権と、すばらしい関係にあった。   過去において、多くの二国間の、地域の、グローバルな問題でそう  だったように、われわれは、引き続き日本の新政権と緊密に協調して  いくことを楽しみにしている。   これらの問題で、米国と日本は、国際社会のために、うまく有益に  働いたと思う。   というわけで、手短かにいえば、すばらしい関係の継続と勝者を祝  福する。     はい、あなた。(注:次の質問者への呼びかけ) Q: ・・・(聞き取り不能)について。もし、先週この問題が取り上  げられていたとしたら申し訳ないが・・・(聞き取り不能)。(国務)  長官は、今ニューヨークにいる。彼女は、日本のカウンターパートに  会う予定はあるか? エレリ: あなたが指摘したので、言わせてもらうが、このことを思い  出させてくれてありがとう、長官は、今日町村外相に電話して、自民  党のみごとな勝利を祝福した。   そして彼が、ハリケーン・カトリーナの犠牲者たちに、お悔やみを  述べたことをご報告する。というわけで、この電話は重要で、この場  で取り上げるにふさわしい。   会談については、とくにニューヨークでの会談は、現地の広報に照  会しよう。彼らが、最新の情報を持っている。   はい、あなた。 Q: 日本政府は、自衛隊イラク派遣の延長を考慮している。米政府は、  日本に何を期待するか・・・(聞き取り不能)? エレリ: われわれは、確かに多国籍軍とイラクの安定と安全のための、  日本の重要な貢献に感謝し、評価する。   彼らが多国籍軍の非常に大切な参加者というだけでなく、日本はま  た、経済的支援、もしくはイラクの経済復興支援、また、あの国の政  治復興のための、とても重要な外交的支援の提供において、きわめて  寛大であったということを述べたい。これが、第1点だ。   第2点目は、日本政府の将来のコミットメントについての決定に関  してだが、将来の多国籍軍への参加は、明らかに日本政府が、適切な  日本の関係機関と調整しながら、決めなければならないことだ。   多国籍軍のすべてのパートナー同様、こうした決定や議論は、イラ  クにとってのベストを望み、われわれ全員がイラクのための目標に向  かってコミットしていること、そして調整、他のパートナーとの緊密  な調整と協議を通じて行われるということを踏まえた上で、われわれ  のすべての行動が、われわれの目標達成を支えるように行われる。 。。。。。。。。。。。。。  実は、この2005年9月12日の記者会見でのエレリ副報道官の発 言は、日本の全国紙の以下の記事で引用されている。   2005年9月13日付『朝日新聞』夕刊2面   2005年9月13日付『日本経済新聞』夕刊2面   2005年9月13日付『読売新聞』夕刊2面   2005年9月14日付『産経新聞』2面  とすると、ふだんから、日本の全国紙の記者たちがフォローしている 記者会見らしいのに、なぜ2005年9月13日の、米政府の本音が垣 間見える公式発言を、『朝日新聞』以外は取り上げなかったのだろう?  そこで、『日本経済新聞』、『読売新聞』、『産経新聞』の読者広報室に 2005年9月12日のエレリ副報道官の発言の報道について尋ねて みると、3社とも、ワシントンで米国務省をカバーしていることを認め た。 だが、翌日の2005年9月13日のエレリ副報道官が伝えられてい ないことを指摘すると、現場で取材したかどうか、さらに記事が本社に 送られてきたかどうかもわからない、という返答に変わった。  エレリ発言を報じなかったことについては、『読売新聞』と『産経新 聞』は、"社の判断"だと答えたが、各社の具体的な判断は教えてもら えなかった。  だが、両社とも"社の判断"が紙面に反映されていることを認めた。 『日本経済新聞』は、"会社には基準も判断もない"という返事だっ た。  これは、編集に"基準も判断もない"という『日本経済新聞』はとも かく、世界最多部数を誇る『読売新聞』と、明確な主義主張を打ち出す 『産経新聞』は、日米関係や自衛隊サマワ派遣延長は日本にとって重要 だが、首相の靖国参拝問題に対する米国の見解は重要ではない、と判断 したことを意味する。  しかしながら、首相の靖国参拝問題は、中国や韓国、アジアの近隣諸 国とだけの関係ではなく、東京裁判を主導した日本の唯一の同盟国・米 国との関係にも影響を及ぼしかねない、重大事項なのだ。  現に、2005年9月11日の総選挙の結果について、選挙前に現政 権を支持する社説を掲げた米有力紙『ワシントン・ポスト』が、2005 年9月13日付の社説で、日本の軍国化への懸念を表明した。  その要約をご紹介する。

続く