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英語圏大手メディアの自衛隊報道 10

(報告:常岡千恵子)


  お次は、英高級紙による、陸上幕僚長インタビューの要旨をご覧いた
だきたい。

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『ザ・タイムズ』(英)          2005年10月6日付
     −自らの組織の名称を口にしない、陸軍を率いる将軍 


 もし都心で通勤する森勉氏に出会っても、誰も彼の職業を言い当てる ことができないだろう。  毎日、プレスの効いたスーツを着て、ピカピカの靴を履いた彼のよう な人々が、厳重に警備された市谷の敷地に集まってくる。  彼は、この場でのみ、オリーブ色の制服と何列もの記念章と四つ星を 着用する。  大衆の目から隠されて、彼は陸上自衛隊陸上幕僚長の森陸将として、 姿を現した。  彼は40年間に渡り、世界で最も優れた装備を持つ軍隊のひとつで、 昇級してきた。  彼は、世界中の軍のカウンターパートと面会する。  だが、彼の父がビルマで戦った第二次世界大戦後60年間、彼は公然 と制服を着用したり、自分の組織を陸軍と呼ぶことを抑制されてきた。  彼は、「これはデリケートで複雑な問題です。私のような人間にとっ て、制服姿で混雑した電車に乗ることは難しいのです」と語った。  これは、日本の軍隊がずっと抱えてきたパラドクスである。  1945年以降で、もっとも国際的な活動を行っている現在でも、多 くの国民が恥に近いものと捉えている。  自衛隊は1954年に創設された。  冷戦が激化し、日本に軍隊を保持させないという従来の方針が、米国 にとって不都合に思えてきた時期である。  だが、今も憲法は軍隊の保持を禁じており、婉曲的な表現が使われる。  今週、日本政府は、日本の海軍のインド洋派遣を1年延長することを 決定し、来月には、サマワに駐留する500人の日本兵の派遣延長を発 表すると予想される。  日本のスタンダードでは、これらは大胆かつリスクの高い任務であり、 戦後の殻から抜け出した日本の軍隊が進んだ、最も遠い到達点だ。  とはいえ、自衛隊のポジションはたいへん微妙なものであり、彼らが 最近表に出るようになって、国民は怒りや不安、そして誇りを感じてい る。  先月、佐世保で、毎年恒例の行事として、自衛隊が銃剣つきの小銃を 携行し商店街を行進し、平和運動家の抗議を受けた。  森陸将は、「日本の戦後の歴史で、とても大きな問題です・・・実に 論争の的なのです」と述べ、「この憲法があるかぎり、陸軍を持つこと は許されないので、われわれは自らを陸軍と呼ぶことはできないのです。 個人的には、国際標準に従いたいと望んでいます。しかし、私の立場で は、コメントすることは適切ではありません」と語った。 。。。。。。。。。。。。。  自衛隊は、国際法上は、一応軍隊とされているが、外国人にとって非 常にわかりづらい存在だ。  サマワでは、英軍とオーストラリア軍が、自衛隊の警護を担当してい る。  軍隊なのに警護が必要な、自衛隊という不思議な武装組織を、日本の ことを何も知らない英国民に伝えた記事だが、外国人からズバリ痛い ところを突かれ、陸上幕僚長も押され気味?  海外に出た自衛官も、他国軍にこんなふうに言われて、"国際標準" に傾いてしまうのかもしれない。  しかしながら、自衛隊の諸君、"国際標準"には別の側面も付随して いることを、くれぐれもお忘れなきよう。  すなわち、"非戦闘地域"への派遣に、1日2万円以上もの手当てを 支給されるような"国際標準"はありえない、ということである。    2005年10月現在、自衛隊のあり方に大きな影響を及ぼしそうな、 在日米軍再編交渉が難航しているようだけど、自衛隊の異文化交流は、 上から下まで、着々と進んでいる?

続く