活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 2-3



 ところで、共和国から派遣された二人のジェダイ騎士は、ナブーの水中に棲
むグンガン族のジャー・ジャー・ビンクスと遭遇する。グンガン族は、ナブー
の地上に棲むアミダラらナブー人とは、文化的対立関係にあった。

 このグンガン族は、その手足のヒョロ長い体型や動作、顔の特徴や楽天的な
性格、独特のブロークン英語からして、黒人のステレオタイプをベースに考案
されたと推察できる。ジャー・ジャー・ビンクスは、マヌケでお人好しの、行
儀の悪いキャラクターとして描かれている。
 
 さらにグンガン族の長は、これまた肥満した黒人男性を彷彿とさせるキャラ
クター。種族の長だというのに、頬を揺らして唾液を飛ばしながら興奮する様
子は、コミカルを越えて侮辱的でさえある。

 『スター・ウォーズ』サーガは、その誕生時から、様々な宇宙人に対して、
民族・人種差別的表現が見受けられると指摘されてきたが、これほど露骨な例
は初めてで、事実、グンガン族の描写は米国内で物議を醸した。
 一方、故郷を脱出して元老院でナブーの窮状を訴えたもの、即解決は無理だ
と判断したアミダラは、ナブーに帰還し、グンガン族の長に軍事的支援を乞う。
 アミダラは、例によって無感情な平坦な口調で同盟を提案し、グンガン族の
長の前にひざまづいて、ナブー人はグンガン族を軽蔑していない、「私たちは
あなたのしもべです」と殺し文句を吐く。
 それまで敵対していたなずなのに、グンガン族の長はこれだけで歓喜し、有
頂天になって、唾液を飛ばしながらアミダラの要求を承諾するのだ。

 しかも、アミダラのいう同盟とは、グンガン族が通商連合のドロイド部隊と
地上戦を交えるという、不平等きわまりない内容。それでも、グンガン族の長
は、わが種族は勇猛なのだと、その場の勢いで同意してしまうのである。
 その結果、ナブー人のレジスタンスが、ドロイド部隊を制御する通商連合の
司令船を空から攻撃し、グンガン軍が多大な犠牲を伴う地上戦を敢行する。
 アミダラの策と交渉術が効を奏したともいえるが、あれだけ精巧な水中都市
を建設し、強力な兵器を保有するグンガン族の長が、こうも単細胞に描かれて
いるのは、腑に落ちない。
 ちなみに、グンガン族は、すべてCGで処理されているが、これも彼らの尊
厳をわい小化する要因になっていると思う。
 CGは豊かな表情をスムーズに表現できるが、どうも欧米のアニメーターは、
伝統的なセル・アニメのノリで、演出過剰に陥る嫌いがある。こうしたCGキ
ャラクターを、実写の人間と組み合わせると、落ちつきのない異様な生物に見
えてしまう。
 しかも、実写の人間と合成する場合、まだCGは、温もりのあるキャラクタ
ーを作れるレベルに達していない。完全なCGアニメ作品の世界では、愛くる
しいキャラクターが生まれているが、実写をベースにした作品でのCG合成キ
ャラクターは、現時点では、やはり何か異質で血の通わぬ存在という印象を拭
いきれない。

 グンガン族に関しては、いわゆる”政治的な正しさ(political correct-
ness)”が横行している現在の米国の、しかも超人気娯楽大作で、こんな描写
が許されるのかと、驚きの連続だった。米国も変わったものだと、妙な感心を
してしまった。

つづく