活動ゴジラ・怪獣関連特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観+α

特撮ファン・常岡千恵子の怪獣史観

『スター・ウォーズ』サーガの変節と米帝国主義の肥大 2-4



 そして、新三部作では、当然、ジェダイ騎士団の全盛時代が描かれることに
なる。

 通商連合に制圧されたナブーから女王とともに脱出したクワイ=ガン・ジン
と、オビ=ワン・ケノービの一行は、銀河共和国首都のコルサントに向かう途
中、驚異的なフォースの力を持つ少年、アナキン・スカイウォーカーに出会う。
 アナキンは奴隷だったが、クワイ=ガンは彼の資質に目をつけ、自分の弟子
にするため彼を解放する。そして、コルサントに置かれた、ジェダイ騎士団の
最高意思決定機関のジェダイ評議会で、アナキンを弟子にしたいと申し出るの
だ。

 高層ビルの上部にある評議会の部屋は、石造りの大寺院風の人工的なインテ
リアで、旧三部作で強調されていた、東洋的な”自然との融合”のような思想
は、まったく見受けられない。
 その上、ジェダイ評議会最古参の重鎮ヨーダが、この立派な会議室で弟子た
ちを従え、未来的な椅子の上でふんぞり返っているではないか!
 その権威主義的な映像は、旧三部作で描かれた高潔で清貧なジェダイのイメ
ージを、ことごとく打ち崩すものだった。
 クワイ=ガンの申し出に、ヨーダは首を縦に振らなかった。ジェダイには、
一人しか弟子を持つことができないという掟がある。クワイ=ガンは、すでに
オビ=ワンという弟子を持っていた。
 クワイ=ガンは、この作品の冒頭で、オビ=ワンはまだ一人前ではないと述
べていた。にもかかわらず、それからあまり時間が経過していないのに、彼は
ここで態度を急変させ、オビ=ワンの修行は完了したと主張。
 ずいぶんな、ご都合主義である。

 また、ヨーダは、9歳のアナキンはジェダイの修行を始めるには年を取りす
ぎており、しかも負の感情が強すぎると指摘した。にもかかわらず、クワイ=
ガンは師に従わない。
 厳格な戒律の下で結ばれているはずのジェダイ騎士団で、クワイ=ガンのよ
うな勝手が許されるのだろうか、と疑問に感じる。

 さらに、オビ=ワンが、師のクワイ=ガンに、評議会に逆らうから出世が遅
れるのだ、と進言する場面まであり、高貴なはずのジェダイの社会も、実はず
いぶん世俗的であったことが判明する。
 その上、ジェダイは共和国の政治に深く関与していたようでさえある。
 だが、何よりも失望したのが、ジェダイの無能さだ。ジェダイの教えに逆ら
い、フォースの暗黒面に身を投じた狂信者集団「シス」の陰謀にも鈍感で、霊
験あらたかな知性に富む騎士団というよりは、用心棒の集団、といったところ
か。旧三部作であれほど過去の栄光が語られたのに、頼みのヨーダの直観も冴
えず、落胆してしまう。
 とくに、今後、ジェダイが没落する展開なのだから、シスの暗躍によって彼
らの目が曇ってしまう以前の、本来の実力を、少しでも示してもらいたかった。

 旧三部作で東洋的イメージを全面に押し出していたジェダイは、いざ蓋を開
けてみると、実はヨーロッパの騎士団に近い存在だったといえる。
 しかも、9歳で修行を始めても遅すぎるという、幼児英才教育を施された、
超エリート集団なのである。
 そこには、ある種の尊大ささえ伺われ、質素さや謙虚さや自戒を尊ぶ、禅や
武士道の精神は、影を潜めてしまった。

つづく