ヒマヒマバブル絶好調道の川柳・森川晃

風雪地帯の高速道路の必要性2



 さて、一般的にバイパスというのは高速通過の障害を回避するルートが設定さ
れ る。市街地やつづら折れの山岳区間などを回避する新ルートである。豊富バ
イパスと 並行する国道40号沿道には市街地は多少あるが、16キロも続くわ
けではない。せ いぜい1キロである。かといって、つづら折れなど地形起因の
きつい線形ではない。 ほぼ直線である。それでは、なぜ既存の開通区間の延長
でもない離れた箇所において 短区間の開通を急いだのだろうか。

 国道40号の当該区間は冬期、日本海方向から吹雪が直接吹き込み、視界不良
でし ばしば通行止めになっていた。そこで、国道40号の東側にある既存林の
さらに東側 に新道を建設して稚内方面へのアクセスを確保することになった。
既存林が暴風雪を 防ぐ役割を果たすのだ。開通から冬期2シーズンを経て、そ
の効果は実証されてい る。

本件は稚内開発建設部のWEBサイト(http://www.wk.hkd.mlit.go.jp/)で詳
し いレポートを公開している。

 道路建設の優先順位には、交通需要の増大への対応のほかに、全シーズンの交
通確 保を目的とするケースもある。福井県福井市の北陸自動車道福井北JCT
から長野県 松本市の長野道松本JCTを結ぶ中部縦貫自動車道は、いかにも無
茶なルートであ る。それでも安房峠を抜けるトンネルが先行開通した。その前
に油坂峠を抜けるトン ネル(越美通洞)は貫通していて、当該区間は一般国道
158号の区間と自動車専用道 路の安房峠道路と組み合わせて、福井県から長
野県までの全線が通年通行可能になっ た。

 なお、油坂峠道路は岐阜県側の東海北陸自動車道から既存の越美通洞までのア
プ ローチ区間を新設して、これまで無料開放だった越美通洞を含む有料道路に
したもの である。交通量は極めて少なく、有料道路として採算が取れるはずも
ない路線になっ た。そして、とうとう2005年9月30日に無料開放され
た。越美通洞を含む白鳥 西ICまでの開通が1999年4月26日なので、有
料道路の寿命は6年5ヶ月だっ た。これは、日本道路公団民営化によるオペ
レーションの一つである。

◆地図1
豊富バイパスの位置図、および写真撮影位置図。
 豊富バイパスは、道央自動車道の(2006年8月現在の)開通最北端である
士別 剣淵ICから約150キロ離れている。将来は道央道に含まれる予定の名
寄バイパス の開通最北端からでも約110キロ離れている。当方の実走時は特
に交通の支障はな く、ほとんど信号停車もなかった。士別剣淵から140分、
名寄から100分、ほぼ 法定速度が平均速度である。この間、一度も追越しを
していないし、追い越されたこ ともない。(◆地図1の下を参照。)

 先述のように、国道40号(稚内国道)の東側(地図の右側)が既存林である。
稚内 国道の西側は、上サロベツ原野が広がり、そのまま日本海に達する。沿岸
から12キ ロほど内陸なのだが、壁になるものが何もないので冬期の風雪はほ
ぼ海岸の状況と変 わらない。ちなみに、当地の海岸線には原始砂丘林というグ
リーンベルトが形成され ている。これにより少しは緩和されているのだが、原
始の名の通り自然の成したもの で、最小限の防御しかしない。

◆写真1
豊富バイパス南行き車線、豊富サロベツIC出口分岐をのぞむ。
(◆写真1から◆写真9まで、2006年5月23日、著者撮影。)  

◆写真2
豊富バイパス南行き車線、豊富サロベツIC出口方向をのぞむ。
フル規格で完工していて、1車線分を規制している。完工路面を全面開放する日
は来 るのだろうか。
  
 豊富バイパスの起点、豊富サロベツICは国道40号に接続していない。国道
40 号の東側約1.5キロの地点で道道84号豊富浜頓別線に接続している。
このことか らも豊富バイパスが純然たる国道40号のバイパスではなく、函館
と稚内を結ぶ道央 自動車道の一部であることは明確である。

◆写真3
豊富バイパス北行き車線、豊富幌加IC出口をのぞむ。
豊富幌加IC前後区間は南北両方向ともフル規格で完工している。この写真だけ
を見 せて中央自動車道の長野県伊那付近であると言っても信じてもらえそうな
堂々たる高 速道路である。中央道の伊那付近の交通量はおおむね1日あたり
30000台から3 5000台の間だが、果たして豊富バイパスはその100
分の1もあるのだろうか。
  
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続く