戦争・軍事 > 海外メディア視線

小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 21

(報告:常岡千恵子)


 前回、2006年3月後半に開催される日米豪戦略対話を目前に控え、
不安を示唆するオーストラリア紙の論評をご紹介したが、以下にライス米
国務長官の訪豪を伝えるオーストラリア紙や米紙の報道の要旨をご紹介
する。

 日米豪戦略対話に乗り気でない論評の要約↓
  >> 小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 20

。。。。。。。。。。。。。

『ジ・オーストラリアン』(オーストラリア) 2006年3月16日付
     −中国封じ込めは大きな間違い:ダウナー
	  


 昨日、ダウナー(豪外相)は、3日間の滞在予定でシドニーを訪れたラ
イス米国務長官に、中国封じ込めは大きな間違いになる、と警告した。

 中国政府を懐柔し、中国を台頭する脅威と見るブッシュ政権のタカ派に
注意を促すメッセージの中で、ダウナー氏は、中国の経済力を確実に地域
に役立てることが課題だ、と述べた。

 ライス氏の訪問は、米豪日戦略対話のためでもある。

 ダウナー氏の発言は、この3カ国フォーラムが中国封じ込めを目的とし
ているといういかなる印象をも薄めるためのものだった。

 彼は、「(米豪日の協力は)中国封じ込め、もしくは中国への敵意だと、
中国に感じさせるべきではない」と述べた。

 中国と日本政府の関係は、最近、中国政府が小泉首相の再三の靖国戦争
神社への参拝に対して厳しい不快感を表明してから、とくに緊張した。

 ライス氏は、先週、中国政府の軍備増強のペースと範囲は、3カ国戦略
対話のパートナーたちが注視しなければならないものだ、と述べた。

 米国の著名なエコノミストのデーヴィッド・ヘイル氏は、最近の中国の
経済成長の研究で、オーストラリア政府は、米国との親密な関係を利用し
て、米政府に中国の未来についてプラグマティックな針路を取るよう奨励
すべきだ、と述べた。

 彼は、「オーストラリアは、米国に、中国は米国の東アジアにおける経
済的利害において、敵や脅威である必要はないと、思い出させる必要があ
る」と語った。

 ライス氏は、昨日、米国がこの地域と緊密な関係を持つことの重要性を
強調し、特定の東南アジア諸国の民主化を称えた。

。。。。。。。。。。。。。

『クリスチャン・サイエンス・モニター』(米)
                     2006年3月17日付
   −かつて緊密に歩調を合わせていたオーストラリアが、
                                  米国の中国についての喧伝に耳を貸さない;
     コンドリーザ・ライスが、土曜日のサミットに先駆けて、
                           中国の軍備増強に焦点を当てる
		  


 ブッシュ米大統領がテキサスの話をすることは有名だが、あるとき、オ
ーストラリアの指導者のジョン・ハワードを、テロとの戦いの保安官代理
だと描写した。
 だが、東アジア安全保障会議に向かうライス米国務長官は、別の保安官
を発見している。

 中国の経済的魅力が、中国政府の軍事費拡大に警鐘を鳴らす米国の努力
へのオーストラリアの熱気を、そいだ。
 土曜日の3カ国戦略対話では、この話題が中心になると思われる。

 オーストラリアの経済がアジアとのさらなる一体化に向かうにつれて、
かつて緊密に歩調を合わせていた米政府とオーストラリア政府の外交政
策は、それぞれ違うドラムの音で行進し始めている。

 シドニーのロウィー研究所の中国専門家のアラン・デュポン氏は、「オ
ーストラリアは、中国との間に政治的、戦略的、貿易上の利害のある中く
らいの国で、2つの大国の間の"押し合いへしあい"に巻き込まれないこ
とが、国益にかなう」と語る。

 オーストラリアは、世界で知られているウラン埋蔵量の30%を含め、
中国が必要な重要な資源の上に位置している。
 現在、二国間で、中国の民需用エネルギーのためのウラン売却を交渉中
だ。

 木曜日、ライス氏の初の訪豪の第1日目、中国への異なった見解がみら
れた。
  ダウナー豪外相との対談後、彼女は記者会見で、米政府の中国に対する
不安を繰り返した。

  だが、ダウナー氏は、オーストラリアは米国とは異なった、独自の対中
政策を持っていることを素早く指摘した。

  それ以前にも、ダウナー氏は、『スカイ・ニュース』に「中国封じ込め政
策は大きな間違いだと思う」と語った。

  当地のアナリストたちは、小泉首相の靖国戦争神社への再三の参拝で中
国政府と常に摩擦のある日本と、米国が協力して、オーストラリアに3カ
国対話を閣僚級レベルに引き上げるよう説得した、と信じている。

  オーストラリアン国立大学のヒュー・ホワイト教授は、「ハワード(首
相)の立場に公平に見れば、彼の政権は強固に中国寄りになっているよう
に見えるが、もちろんこれは我が国の利益に沿うものだ」と述べた。

  一方、アラン・デュポン氏は、中国は将来、潜在的脅威となりうる可能
性はあるが、この問題について「米政府が取るような高圧的で説教ぶった
トーン」には反対している。

。。。。。。。。。。。。。

  安倍官房長官は、オーストラリアとインドと日本による中国封じ込めを
提唱してるけど、大丈夫?
  インドは中国と、かつてなくビジネスで盛り上がってるし。

  ご参考までに、頼みのオーストラリアのある新聞報道の要旨をご紹介す
る。

。。。。。。。。。。。。。

『シドニー・モーニング・ヘラルド』(オーストラリア)
                                           2006年3月18日付
     −日本の与党には、正道を踏み外した考え方が存続している



  本日、ダウナー氏とライス氏が麻生氏とシドニーの海軍基地で会談する
とき、多くの不吉な歴史がつきまとうだろう。

  日本の麻生外相は、次期首相候補である。

  だが、麻生氏とそのライバルの安倍氏が、新しい血を代表するかどうか
は、別の話だ。

  両氏とも、自民党と戦前の日本のダークサイドにさかのぼる血筋なので
ある。

  麻生家が九州で経営した炭鉱には、戦時中に多くの朝鮮人が奴隷のよう
な待遇で働いていた。
  安倍氏の父親の晋太郎氏は、カミカゼ・パイロットの訓練を受けていた。

  麻生氏は吉田茂氏の孫で、安倍氏は岸信介氏の孫だが、これらの戦後初
期の首相たちは、戦後憲法9条で軍事行動が制限されているにもかかわら
ず、アジア大陸沖の米国の前進基地としての日本の新しい役割を創出した。

  日本の戦時の軍需相かつ、戦犯容疑者として連合国に逮捕された岸氏の
ような人物は、世代交代が自民党内の戦時の汚れを清めていくだろうとい
う多くの米国人の期待から、受け入れやすくなったに違いない。

  だが、自民党議員の世襲のせいもあって、正道を踏み外した考え方は存
続している。
  小泉氏と安倍氏と麻生氏は、戦時のシンボルを持ち出して日本のナショ
ナリズムを煽り、不快な発言で中国と韓国の苦い記憶を掻き立ててきた。

  小泉氏の劇的な靖国神社参拝の効果は、よく知られている。
  靖国神社は、処刑された指導者を含む日本の戦没者に捧げられ、敷地内
にはアジア侵略を正当化した博物館がある。

  麻生氏は就任1年も経たぬうちに、その発言で近隣諸国を扇動する独特
の性癖を露にした。

  麻生氏も安倍氏も、米国の大学で学んだ、知性ある人々だ。
  彼らは、最終的に米国の庇護から離れたいというそぶりも見せたことは
ない。

  自民党の一部の指導者たちの本音によれば、竜の尾をひねっている理由
は、日本国民の間に中国に対する脅威を意識的に創り出し、自民党に憲法
9条を改正させようとしているのだという。

  オーストラリアの外交政策は、長い間、米国のそれと並行して、日本を
"普通"の国にする方向で動いていた。

  イラクでのオーストラリアの主要な軍事展開さえも、この付随的目的が
伴い、日本の軍隊の建設チームを保護する任務を負った。

ダウナー氏とライス氏が麻生氏と対談するとき、日本がもっと強腰にな
るべきだと奨励するかもしれない。
だが、東アジアの三大国の戦時の敵意を掻き立て、おそらく新しい日中
間の戦略的対抗意識をスタートさせることで達成されなければならない
ことなのか?

。。。。。。。。。。。。。

 サマワの自衛隊はオーストラリア政府に迷惑かけちゃったし・・・・・。
 
  2005年の自衛隊サマワ派遣群長の失言↓
      >> 英語圏大手メディアの自衛隊報道1 
      >> 英語圏大手メディアの自衛隊報道2 
      >> 英語圏大手メディアの自衛隊報道3 
      >> 英語圏大手メディアの自衛隊報道4 
	  
	  
 お次は、日中の個人的な友情に焦点を当てた記事の要旨をご紹介する。

。。。。。。。。。。。。。

『ウォールストリート・ジャーナル』(米)     2006年3月21日付
      −外交の研究
          中国人と日本人の友情が、
                                  国家間で仲良くすることの難しさを垣間みせる

		  


 日本育ちのイイヅカ・アサヨ氏は、中国に魅了された。
 というわけで、この22歳の女性は、知識を広げ中国人の友人をつくり
たいと、上海のフダン大学に留学する機会に飛びついた。

 フダン大学では、日本嫌いの20歳の経済学部学生、チェン・リー氏と
出遭った。
 チェン氏の両親は、曽祖父が帝国陸軍に殺されたと家族から聞かされて
育った。

 というわけで、当初は二人の間に友情を育むことは不可能にみえた。
 
 しかし二人は付き合いを続け、お互いの意見を変えようと努め続けた。

 二人の若い女性は、二人の母国の難しく微妙な関係に、彼女らなりに折
り合いをつけている。
 低成長の日本が急拡大する中国で機会を見つけているが、アジアの二大
経済大国は、化膿する昔の戦争の傷に脅かされてきた。

 香港を含む中国は、日本最大の貿易パートナーとなった。
 
 中国では、標準的な推測で、帝国陸軍が少なくとも中国人1000万人
を殺した、1937年から1945年の中日戦争の記憶がまだ強く残って
いる。
 中国人は、日本の教科書が戦争を軽く扱い、小泉首相が論争の的の靖国
神社を参拝することに反対している。

 中国政府は、小泉氏とのサミットを拒否し、日本の国連安保理常任理事
国入りに反対して、抗議している。
 2005年春、何千人もの中国人が反日デモに参加した。

 イイヅカ氏は高校で中国語を勉強したときから、中国に惹かれた。
 彼女は、中国の民族的多様性と数千年の歴史を愛し、また、中国語を習
得すればキャリアに有利なことを知っている。

 チェン氏は、高校時代に反日ハンガーストライキに参加した。
現在、日本製品をボイコットし、2年前に韓国製デジタルカメラを買っ
た。

 チェン氏は、イイヅカ氏は、いつも日本人同士でくっついてファッショ
ナブルな日本人学生とは、違うようにみえた。
 チェン氏は、「彼女はナイスだった。もっと心を開くべきなのかもしれ
ないと思った」と振り返った。
 
 二人の女性には、共通する点がたくさんあることがわかった。
 二人とも香港スターのレスリー・チャンが好きだった。
 イイヅカ氏は、チェン氏に日本料理をおごった。

 チェン氏がイイヅカ氏と出会ったとき、チェン氏はすでに自分が日本に
ついて習ったことが正確なのかどうか、疑い始めていた。
 チェン氏にとって、イイヅカ氏は「直接の情報源」だった。

 一方、イイヅカ氏は、中日関係について話し合わなければならないと感
じた。
 フザン大学入学前、彼女は満州で満員の夜汽車に乗ったが、身の安全を
考えて、他の乗客に自分は韓国人だと告げた。

 中国に来る前から反日感情については耳にしており、日本の過去の過ち
について理解するよう努めなければならないと感じた。
 同時に、一部の中国人の反日感情が、歪曲された情報がもとになってい
るとも感じた。

 イイヅカ氏とチェン氏は、小泉氏の靖国神社参拝について激論を交わし
た。

 首相は日本の中国侵略を謝罪し、彼の参拝はふつうの兵隊の魂に祈りを
捧げるものだと述べたが、この神社が、日本のアジアにおける戦争を指導
し、"平和に対する罪"で有罪にされた14人のA級戦犯を合祀している
ため、中国では空ろに聞こえる。

 チェン氏は小泉氏の参拝を不快に思うと述べ、イイヅカ氏は参拝者は戦
死した親戚に祈りを捧げていると答え、小泉氏は平和のために祈っている
のだと付け加えた。
 チェン氏は、"国の見解を代表する"首相による参拝は違うと主張した。

 チェン氏の感情の中核は変わらない。
 昨春、反日感情が盛り上がったとき、彼女はデモに参加した。
 イイヅカ氏はそれを残念に思い、中国人が自分の世代を過去の問題で責
めないでほしいと願った。

 意見の相違にもかかわらず、二人は親密なままだ。
 チェン氏は、「日本が嫌いでも、日本人全部が嫌いなわけではない」と
いう。

。。。。。。。。。。。。。
 
 お次は、ワシントンから見た日韓関係の記事の要旨をご紹介する。

。。。。。。。。。。。。。

『ISI エマージング・マーケッツ・アフリカワイヤー』(南アフリカ)
                                     2006年3月22日付
    −中国を背景に、過去が日韓関係を形作る

 国家間関係は常に複雑だが、歴史的不満と今日の怨念と未来の不安定性
を負う関係をどう描写するか?
 さらに、野心的な大国が、いかなる機会をも利用しようと、付近に浮か
んでいる状況を想像してみよう。




 これは、ドライで冷たい雰囲気の、今日の北東アジアの実情である。
 韓国と日本は、40年以上の正常な国交関係にもかかわらず、過去をつ
かめないままでおり、しばしばその関係が乱れ、はるか国境を超えて波紋
を及ぼしている。

 両国とも、超大国として浮上する近隣の中国とのバランスを取るために
同盟が必要だと感じている一方、感情的ないさかいのかたちで現れる歴史
的不満が、それをほぼ不可能にしている。

 この状態に、中国の台頭の"封じ込め"を望む米国が懸念している。
 
 最近、笹川平和財団がワシントンで主催した会議で、この状況がいかに
複雑なものかが示された。

 韓国、日本、米国の高名なエキスパートたちが、問題を異なる観点で捉
え、しばしば現在について合意できなかった。
 彼らは、未来のビジョンについても異なる見解を持ち、合意できたのは
過去だけだった。

 だが、今日の仲たがいの中心に位置し、韓日関係の未来に疑問を生じさ
せるのは、過去と、30年以上も日本の植民地支配下にあった韓国の経験
によって形作られた過去の異なる解釈にほかならない。

 これは、要約すれば、今日の韓日関係の悲観論ということになるが、起
こっていることすべてが否定的なものではない。
 韓国のある日本専門家によれば、政府間関係は扱いにくく冷え込んだま
まだが、国民の関係は"和解"に達するほど改善されたという。

 この指摘は、韓日関係に新たな興味深い展開を加える。
 政府の行動が民意を反映する民主社会で、政府と国民を切り離すことが
できるのか?
 もしそうなら、国民は現在の利益のために、すぐ前の過去を無視できる
か?

 この問題を理解するには、歴史が重要だ。
 日本の戦前と第二次世界大戦中の帝国主義的行為、とくに韓国と中国の
一部の占領は、北東アジアに長年の不満を負わせた。

 韓国と中国は、日本は過去の過ちをじゅうぶんに償っていないと感じて
いる。

 さらに、日本の首相による戦犯が祀られた靖国神社への参拝と、修正主
義的歴史教科書の見直しの拒否、一部の島の主権の主張は、元犠牲者の感
情に対する日本の無関心を表すものとされている。
 
 一方、日本人は、歴史について議論しないが、韓国と中国の世論の要求
に反発している。

 多くの日本人、とくに若い世代が、過去の行為についてじゅうぶんに謝
罪したと感じている。
 彼らは強腰の外交政策を求めており、靖国神社参拝のような刺激物は、
外圧からの日本の独立性を示すものとみている。

 米国の外交政策立案者たちは、韓国と日本が見解の相違を解決し、共同
で中国と北朝鮮が投げかける地政学的不確実性に対処することを、最も望
んでいる。
 だが、韓国は中国を、日本から譲歩を得るための梃子とみなしている。

 米政府高官が、韓国の指導者たちに、対日関係強化の利益のために、過
去への不満を捨て去るよう求めたが、韓国の国民感情がこれを許さない。

 同様に、日本の政治家も、外国の要求に過度に従うことは国内世論の反
発を買うため、控えている。
 ここにジレンマがある。
 
 米国の北東アジア専門家のケント・カルダー氏は、小泉首相の靖国神社
参拝を例に挙げて、「靖国問題で、小泉首相は明確に態度を固めているよ
うにみえる。今の重要な問題は、靖国問題だけでなく他の課題においても、
(今後の日本の指導者が)どれだけ同様のスタンスを固めるかにある」と
述べる。

 専門家たちは、民主社会と政府の本質は、政府の指導者たちが世論の影
響を受けやすくするものだが、単に世論に従うだけでなく、世論を主導で
きる歴史の瞬間をつかむことができるはずだ、と主張した。


続く