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小泉ニッポン!”果敢の先制攻撃”劇場2

(報告:常岡千恵子)


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『ワシントン・ポスト』(米)               2006年7月11日付
        ―日本で、先制攻撃能力について強硬論
             中国とロシアは北朝鮮のミサイル・テストを"遺憾"に思う
	  


 月曜日、日本政府当局者たちは、北朝鮮のミサイル・テスト以来、最
も強硬なコメントを発し、日本が北朝鮮のミサイル基地に先制攻撃する
ための軍事的能力を追求するべきかどうか議論を行いたい、と述べた。
 現在、日本はこの技術を保有していない。

 同時に、日本はプッシュしていた国連安保理決議採決を、譲歩した。

 そして、外交的打開を狙った中国の代表団が、ピョンヤンに到着した。

 日本の戦後の平和憲法は、軍隊の保有と軍事力による国際紛争の解決
を放棄している。
 過去数十年の間に、日本は、憲法が厳格な自衛は保障しているという
根拠のもとに、24万人の軍隊をつくった。
 制限についての解釈は続き、国会は以前、日本に向けて発射されるミ
サイルへの先制攻撃は、自衛の範囲に入るかもしれないと規定した。

 ここ数日、日本の指導者たちは、この解釈を引き合いに出している。
 月曜日、次期首相と目される安倍官房長官は、日本は北朝鮮のミサイ
ル基地にこのような攻撃を行う軍事能力を追求するかどうか検討する
べきだと述べた。

 安倍氏は、日本の額賀防衛庁長官の日曜日の発言を受けて、このよう
な選択肢の「議論を深める必要がある」と語った。

 しかしながら、その後、小泉首相はより注意深く、「日本は抑止力を
持つべきだが、どのようなかたちにするかは、さまざまな状況がありう
るので専門家の意見を慎重に聞かなければならない」と述べた。

 ワシントンでは、ライス米国務長官が、米国は中国が北朝鮮に圧力を
かけるための時間を与えられるべきであることをと認めた、と述べた。

 日本の迅速で強硬な対応は、韓国の慎重さと対照的だ。
 韓国の対日関係は緊張し、ミサイル・テストが行われた日、韓国政府
は日本政府の抗議にもかかわらず、両国が領有権を主張する海域に調査
船を出した。

 月曜日、韓国は日本政府が"騒いでいる"と非難し、また、韓国とと
もに日本の植民地支配に耐えた北朝鮮に対する、日本の先制攻撃能力の
議論を非難した。

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 尚、上の米紙の記事は、同日、『ウォールストリート・ジャーナル・
アジア』、『トロント・スター』(カナダ)、『ウィニペグ・フリー・プレ
ス』(カナダ)、『ヒューストン・クロニクル』(米)にも要約が掲載され
た。


 さて、次は、国連本部のお膝元の米地方紙による、国連発の記事の要
約をご紹介したい。

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『ザ・ニューヨーク・サン』(米)     2006年7月11日付
     −中国の示唆に国連で後退
		  


  昨日、中国が、国連安保理で、北朝鮮の過去の合意を、拘束力を持つ
国際法へと固める決議に対し拒否権を行使することを強く示唆したた
め、日本とその他の支持国は後退し、採決のプッシュをやめた。

 中国は、そのかわり、拘束力のない声明案を配ったが、日本と英国と
米国が直ちにこれを退けた。

 複数の外交官が匿名を条件に本紙に語ったところによれば、中国の動
きは拒否権行使を振りかざす直前で止まったが、決議案の支持者たちは、
中国が国連憲章第7章に基づいた、いかなる決議も阻止するつもりであ
ることを悟った。
 中国は、常任理事国として、拒否権をめったに使用したことがない。

 昨日、中国の副相がピョンヤンに発ち、決議案の支持国がその外交努
力の結果を待つことになった。
 
 だが、日本政府当局者たちは、融和する気がなかった。
 麻生外相が東京で、「被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」
と語ったと伝えられた。
  政府高官の安倍氏は、日本は自ら課した非軍事的姿勢を覆し、ピョン
ヤンに先制攻撃を仕掛けるかもしれない、と述べた。

  ニューヨークでは、大島国連大使が、明らかに中国の決議案反対に不
満だった。

  中国の国連大使は、母国が日本の決議案を"支持しない"と記者団に
述べた。

  週末、常任理事国5カ国と日本が会談したが、大島氏と米国、英国、
フランスの大使たちは、日本の決議案について交渉することすら、中国
を説得できなかった、と匿名を条件に外交官2人が語った。

  中国は、露骨に拒否権を振りかざさなかったものの、昨日、決議案採
決を見送らせるのにじゅうぶんな脅威をほのめかした。

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  以下、日本の閣僚たちの"先制攻撃"発言後の海外英文メディア(中
国と韓国を除く)の代表的記事の要約を、引き続きお楽しみいただきた
い。

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『アイリッシュ・タイムズ』(アイルランド) 2006年7月11日付
          −日本、北朝鮮への制裁決議から後退



  昨日、日本は、国連安保理で北朝鮮に対して制裁を科す決議案の採決
を取り下げたものの、このような措置への希望は捨てないと主張した。

 米国と英国とフランスは日本主導の決議案を支持しているが、中国と
ロシアは拘束力のない声明を望んでいる。

 昨日、中国が拒否権行使をほのめかし、今週後半まで採決を延期して
ほしいと依頼したことにより、日本は決議案の採決を取り下げた。

 米政府は国連の決議を希望してはいるが、北朝鮮の6カ国協議復帰に
焦点を当てている。

 北朝鮮と政治・経済的対話を続けてきた韓国は、北朝鮮政府に対する
いかなる制裁の動きにも反対し、ノムヒョン大統領は日本が朝鮮半島の
緊張増加に加担していると非難した。

 日本政府高官たちは、北朝鮮への先制攻撃の可能性を論じて、北朝鮮
への圧力を高めた。
 安倍官房長官は、(先制攻撃が)合憲かもしれないと述べた。

 日本の戦後の憲法は、国際紛争を解決するための軍事力の行使と、戦
争のための軍隊の保有を禁じているが、日本は24万人の"自衛隊"を
保有している。

 昨日、中国の代表団が北朝鮮に到着した。

 ヒル米国務次官補は、中国の北朝鮮に対する影響力について、疑問を
呈した。
 彼は、「中国は北朝鮮に『ミサイルを発射するな』と言ったのに、北
朝鮮は発射した。というわけで、誰もが、とくに中国が、多少不安を感
じていると思う」と語った。

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『フィナンシャル・タイムズ』(英)         2006年7月11日付
           −北朝鮮を巡り、角突き合わせる東京とソウル

		  


 韓国と日本が、北朝鮮のミサイル・テストへの対応を巡り、辛らつな
小競り合いに興じ、両国の相異を激化させ、北朝鮮政府への対応にとっ
て歓迎しがたい混乱を生じさせている。

 すでに両国は、北朝鮮に制裁を科すかどうかで意見を異にしているが、
韓国政府の遅い対応とノムヒョン大統領の沈黙に韓国国内で猛烈な批
判が出るなか、ノムヒョン大統領は日本の"激しい"反応を攻撃した。

 昨日、日本の官房長官で次期首相と目される安倍氏は、韓国政府の批
判を遺憾に思うと述べた。

 この論争は、(北朝鮮の)ミサイル・テスト以前に、重大な地域的緊
張を招いていた韓国政府とその元植民地支配国の摩擦を想起させる。

 アジアが北朝鮮のミサイル発射で目覚めた水曜日、韓国と日本の船が、
両国の領土問題の焦点である竹島周辺で、チェースを続けた。

 また、安倍氏は昨日、日本は外国のミサイル基地への先制攻撃が合憲
であるかどうか、検討する必要があると述べた。

 安倍氏の発言は、額賀防衛庁長官の「与党はこれを検討するべきだ」
という日曜日の発言に続くものである。

 これらのタカ派発言は、昨日、米日の政府高官が北朝鮮のミサイル・
テストに協力して対応することを確認している最中に、発せられた。

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 ボルトン米国連大使は、中国が北朝鮮と交渉している間は、国連安保
理決議案採決を延期すると述べ、決議支持国は毎日立場を再考するとも
語った。

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『ニューヨーク・タイムズ』(米)     2006年7月11日付
  −日本が、北朝鮮のミサイル・テストに、なお厳しい言葉を見出す



 月曜日、日本政府のスポークスマンが、日本の憲法下で先制攻撃が許
されるかどうかを検討するべきだと述べ、北朝鮮のミサイル・テストに
対する雄弁を上昇させた。

 米国の代表は、関係諸国は「声をひとつにして」、このテストへの非
難を発するよう求めた。

 すでに拉致問題で激怒している日本は、ほかのどの国よりも強い対応
を示してきた。

 月曜日、小泉首相の後継者と目される安倍官房長官が、日本の平和憲
法が自衛の下に北朝鮮のミサイル基地への先制攻撃を認めるものかど
うかを検討するべきだとする、これまでで最も強硬な発言を行った。

 安倍氏の発言は、前日の額賀防衛庁長官の「(敵国が)引き金に手を
かけたという時であれば」日本は先制攻撃を考えるべきだという発言に
続く。

  しかしながら、日本はこのような攻撃を実行する軍事能力を持たず、
これらの発言は仮定的なものである。

  日本の姿勢が強硬すぎるという印象が広まり、他のアジア諸国との間
に亀裂を起こし、ヒル米国務次官補による調整を複雑化している。

  一部のアナリストは、日本政府の発言は主として国内向けで、安倍氏
が自身を、人気の高い小泉氏に代わる強いリーダーとして印象づけよう
とするものだ、と指摘する。

  軍事アナリストの熊谷直氏は、「安倍氏たちにとっては、通常の軍隊
創設に対する国民の支持を獲得するチャンスだ」と述べた。

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 尚、上の米紙の記事は、同日、『インターナショナル・ヘラルド・ト
リビューン』(仏)、『デザート・モーニング・ニューズ』(米)、『シカゴ・
トリビューン』(米)にも掲載された。

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『AP通信』(米)                         2006年7月11日付
          −北朝鮮ミサイル危機が不和をかきたてる
		  

  火曜日、北朝鮮のミサイル・テストが北東アジアの近隣諸国の間にさ
らなる不和をかきたて、日本政府の北に対する先制攻撃の示唆を巡って、
韓国と日本の一騎打ちになった。

  一方、日本と中国は、国連の対応を巡って、異なる戦略を提唱した。

  これらの揺らぎと分裂は、北を喜ばせただろう。

  ミサイルは慌ただしい外交活動を引き起こし、火曜日、米国の使節が
東京から中国へ飛んだ。
 北朝鮮の代表団も北京に向かう一方、北朝鮮と韓国がプサンで閣僚級
会議を始めた。

 月曜日、日本の政府高官が、北のミサイル基地を先制攻撃するかもし
れないと述べた。
 安倍官房長官は、まず、このような攻撃が平和憲法に違反するかどう
かを検討する必要がある、とも語った。

 日本がこのような攻撃を可能とする軍事能力を保有しているかどう
かは、別の問題である。
 防衛庁は、北朝鮮に届く弾道ミサイルは保有していないと述べた。

 韓国大統領府のスポークスマンは、日本政府の"傲慢さ"を批判し、
先制攻撃のような危険で挑発的な議論で朝鮮半島の危機を煽っている
と述べた。
 また、日本がミサイル・テストを軍事大国になる言い訳に使っている
と非難した。
 朝鮮半島は、1910年から1945年まで、日本の植民地だった。

 韓国は、日本の国連決議採決の強硬姿勢に批判的だった。

 中国も、よりソフトなアプローチを好んでいる。

 米国は、北朝鮮の弾道ミサイル発射の凍結と、6カ国協議への復帰を
望んでいる。

 このほか、中国は、北朝鮮に代表団を派遣するなどの外交努力を行っ
ている。

続く