戦争・軍事 > 海外メディア視線

小泉ニッポン!”果敢の先制攻撃”劇場1

(報告:常岡千恵子)


  2006年7月の北朝鮮のミサイル危機では、アグレッシブな日本の
動きが目立ち、当初から日本が最も厳しい態度を取っている、と指摘し
た海外英文メディア(中国と韓国は除く)も多かった。

  そして、あまりの日本の突出ぶりに、早いうちから以下のような記事
がチラホラ出始めた。

 まずは、英高級紙の社説の要旨をご紹介する。

。。。。。。。。。。。。。

『ザ・タイムズ』(英)           2006年7月6日付
     −中国カード;
        中国政府だけが、ますます無責任な北朝鮮を抑えられる
	  


 明確な非難だった。「これは許し難く、受け入れ難いことだ」。
 このコメントは、米政府ではなく、かつてこの孤立したスターリン主
義の親密な支持国だったロシアから発せられた。

 最も重要な非難は、中国政府からのものだった。
中国は、この件を「深刻に懸念」していると述べたが、周囲が平静を
保つことも求めた。
  
 北朝鮮は、残念なことに過去に大成功した戦術を用い、米国の譲歩を
引き出すためにミサイルを発射したのかもしれない。
 
 しかしながら、その結果、この地域全体を不安定化させることになっ
た。
 このミサイルは、日本の防衛政策に決定的な変化を強い、戦後の"盾"
の姿勢から積極的な"刀と盾"に移り、必然的にこの地域全体の軍事バ
ランスを変えることになりそうだ。

 この変化は、中国を深刻に警戒させるだろう。
 中国は長年、国内対策として、意図的に日本の軍国主義を誇張してき
た。
 今、北朝鮮に対して強制的な手段を取ることに失敗した中国は、本当
に厄介な現実の日本の軍備増強に直面するかもしれない。

 中国は、本当の圧力を有する、唯一の国だ。
 中国は、国益とグローバルな安定のために、この不道徳で頑迷な政権
(注:キムジョンイル体制)に対して、強硬にならなければならない。
 
。。。。。。。。。。。。。

 次は、オーストラリア紙の報道の要約をご覧いただきたい。

。。。。。。。。。。。。。

『ジ・オーストラリアン』(オーストラリア)   2006年7月7日付
          −核交渉に臨むワシントンの男の手は、制限されている
		  


  昨日、クリストファー・ヒル氏が、再び荷物をまとめて、成果を期待
できなさそうな、北京、ソウル、東京、モスクワを回る旅に出発した。
  ヒル氏は、6カ国協議でブッシュ政権を代表する使節だが、諦めムー
ドを募らせている。

  共和党員を含むブッシュ政権の批判者たちは、ヒル氏はじゅうぶんな
裁量を与えられていない、という。

  ブッシュ政権は、2002年の一般教書演説で、イラク、イランとと
もに"悪の枢軸"と述べた北朝鮮との直接対話を拒んできた。

  ところが先月、ライス国務長官が、イランとの直接対話を検討すると
述べた。

  これが、北朝鮮のキムジョンイル氏を刺激したことは、間違いない。

  だが、この批判が見逃しているのは、中国がどうしているかだ。

  米政府は、世界唯一の超大国として、すべてを解決するよう依頼され
る。
  うまくいかなければ、もちろん、それは米政府の責任だ。
  だが、もし中国が国際的に名を上げる課題があるとすれば、それは北
朝鮮に核計画を放棄させることだろう。

  ヒル氏は北京で、この点を再び告げるに違いない。
  この問題が解決されなければ、朝鮮半島のさらなる軍備増強と、北朝
鮮の挑発に対する日本の核武装という脅威に直面しなければならなく
なる。
  これは、誰の利益にもならないし、中国政府の利益にならないことは
確実である。

。。。。。。。。。。。。。

  この記事を読んでわかるように、そして、すでに本連載でお伝えした
ように、オーストラリアは近年、中国への傾斜を加速させている。

  オーストラリアの熱烈親中ぶり↓
  >>小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 20
  >>小泉ニッポン!"東アジア一人ぼっち"劇場 21


  次は、シンガポール国際問題研究所所長による論評の要旨をお伝えす
る。

。。。。。。。。。。。。。

『トゥディ』(シンガポール)                 2006年7月7日付
          −日本よ、永続的な絆をつくれ;
                さもなくば、貴国の新たな安全保障上の役割は
                                   新しい不安定性につながりうる
                                              サイモン・テイ筆



   現在、東京の灰色の雲は、日本とその地域における役割についての懸
念を映し出す。
  日本は周辺の安全保障を強化し、北朝鮮のさらなるミサイル発射を警
戒している。

  最近の発射テストは、前回のテストの余韻がまだ消えないときに実施
された。

  (前回の)ミサイルは、日本上空を飛び越え、物理的な被害を及ぼし
ていない。
  だが、これは日本の安全保障に新思考をもたらした。
  以後数年、日本はかつてなく米国に接近し、自衛隊に改めて注目した。

  小泉首相の最後の訪米では、日本は安全保障と平和のためのグローバ
ルな役割に向かった。

日本は国連安保理の常任理事国入りを目指してきた。
  第二次世界大戦以降の制限を緩和して、"普通の国"になる議論もな
されている。

  世界は重大な不安定性に直面し、日本がコミットメントを強めること
は、助けになる。

  だが、日本の新たな安全保障上の役割を受け入れるについては、動揺
や論争もある。

  その多くは、小泉首相の定期的な靖国神社参拝によって、火がついた。
  この行為は、中国と韓国の抗議の咆哮を誘発し、また、それほどでは
ないにせよ、東南アジア人に日本の苛酷な支配を想起させた。

  これは、過去だけの問題ではない。
  この地域の将来のリーダーを賭けた、日中間の緊張の兆候が現れてい
る。
  新たな日米同盟は北朝鮮やグローバルな問題に対処するためだけの
ものではない、という者もいる。
  彼らは、(新たな日米同盟は)中国の台頭と増大する影響力を封じ込
めることも目的にしている、と見る。

  もし、中日米の三角形に緊張が高まれば、この地域が影響を受ける。

  日本にとっては、役割の拡大には、貢献する能力だけでなく、貢献を
受け入れる他国の信頼が必要だ。

  日本は、自身がほかのアジアの国とは違うと考えがちだ。
  日本は、米国への傾倒と、東アジアのフル・メンバーであることの優
先順位を再調整しなければならない。

  日本は、東アジアに新たに現れつつある構想での大きな役割を担い、
ASEANとの関係を強化し直さなければならない。

  このような努力は、今後も発射されうる北朝鮮のミサイルから日本を
守りはしない。
  だが、日本の努力は長期的な絆を構築し、近隣諸国との関係を堅固な
ものとし、アジアの平和と繁栄における相互依存性を強調する。
  もし日本がそうしないなら、日本の安全のための措置が、逆に新たな
非安定性につながる可能性もある。

。。。。。。。。。。。。。。

  そして2006年7月9日、10日に、日本の閣僚たちが"敵基地攻
撃"に言及すると、海外メディアに衝撃が走った。
  日本の大手メディアは、例によって、韓国政府の反応を中心に報じて
いたが、実は海外メディアも大騒ぎしていたのである。

  ここで、東長崎機関の愛読者の皆様に、ぜひとも覚えておいていただ
きたいことがある。
 海外では、いわゆる"敵基地攻撃論"は、ズバリ"先制攻撃論"を意
味する、ということだ。

  いくら"相手が攻撃に着手した場合"、"急迫不正の侵害"などという
曖昧な条件を付けても、実際に敵から攻撃を受ける前に敵を攻撃するの
は、"先制攻撃"である。

  これは、日本語独特の思考パターンが、多くの外国語のそれとズレる
場合が多いことを物語っている。
  ウィンストン・チャーチルも「日本語というものがやっかいで、不正
確」と、日本語の曖昧さが軍事においてマイナス面を持つことを指摘し
ている。

  世界の主要国が、日本語より明確な言語で思考している中で、「日本
語はこうだ!」と突っぱねても、本連載でずっとお伝えしてきたように、
小泉首相の靖国神社参拝の弁明が海外にまったく通じないのと同様、有
効ではない。

  何百万人もの日本人を犠牲にした、61年前の大失敗の本質は、この
へんにもあると思う。
  意地を張って、同じ過ちを繰り返したら、それこそ、あの戦争で亡く
なったご先祖様たちが草葉の陰で泣いてしまう……

  もちろん、安全保障を売りにしている安倍官房長官の、2006年7
月12日の「誰も先制攻撃とは言っていない」という反論は、海外メディ
アには通用しない。

  テレビでも、"軍事通"のセンセイ方が張り切ってらっしゃったけど、
"攻撃ハ最大ノ防御ナリ"なる旧軍の伝統を墨守なさってる……?

  旧陸軍はクラウゼヴィッツの『戦争論』を研究していたというが、『戦争
論』では、攻撃側は防御側の3倍の戦力を要するとあり、いつのまにか
意味を曲解してしまうのは、日本の"軍事通"の十八番?

		  
2006年7月12日付『日本経済新聞』朝刊2面

 せっかく米メディアの反応を報じた『日本経済新聞』も、「米国が
質の異なる敵基地攻撃論を『先制攻撃論』と受け止めるのは、日本の憲
法論に不案内なだけでなく」と、日本側の論理がマイノリティで国際的
に通用しないことを、まったく自覚してない書きっぷり。

  この時は、米政府の報道官たちが優しくフォローしてくれたけど、そ
れすら気づいてないんじゃ……
 憲法の枠内だろうが枠外だろうが、"先制攻撃"には変わりないこと
を、理解なさってない?

 軍事・外交は、相手があってのこと。
 日本は国際政治の舞台では初心者なんですからねぇ〜、くれぐれも再
びズレないようにしてくださいよぉ〜! 



  それでは、日本政府が"先制攻撃論"を唱えた後の、海外英文メディ
ア(中国と韓国を除く)の小泉ニッポン報道の代表的記事の要旨を続々
ご紹介する。

。。。。。。。。。。。。。

『AP通信』(米)                       2006年7月10日配信
         −日本、北朝鮮のミサイルに対し行動を検討



  月曜日、日本は、北のミサイル基地への先制攻撃が違憲かどうか検討
すると述べ、国連安保理が制裁を求める決議を却下した場合、(北朝鮮
に対して)さらに強い行動を取ることを示唆した。

  日本は、先週の北朝鮮のミサイル発射実験に激しく動揺し、政府高官
数人が公然と、日本政府による北のミサイル基地への先制攻撃を可能に
する法的枠組みも含めて、防衛を強化するべきかどうかを論じた。

  安倍官房長官は、「議論を深める必要がある」と述べた。

  日本は、中国とロシアの抵抗にもかかわらず、国連安保理決議を押し
た。

  米国と英国とフランスは日本の決議案への支持を表明し、日本の麻生
外相は、ロシアが採決を棄権する可能性があると述べた。

  理事会のメンバーでない韓国は、決議への反対を表明していないが、
日曜日、韓国政府は、日本政府の発射実験への遠慮ない批判を非難した。

  米国は、北朝鮮を核放棄のための6カ国協議に復帰させるよう、中国
を促している。

  中国政府は、北がボイコットの姿勢を貫けるかたちで出席できる、非
公式の6カ国協議の開催を提唱した。
米国はこれを支持し、北とは6カ国協議のサイドラインの会議で会談
できると述べた。

  月曜日、東京では、ヒル米国務次官補が麻生外相と会談し、関係諸国
が一致した態度を取ることの必要性を強調した。

。。。。。。。。。。。。。

『ジ・アイリッシュ・イグザミナー』(アイルランド)
                         2006年7月10日付
     −日本、国連の対北朝鮮制裁に向けて押す

 本日、日本が北朝鮮のミサイル発射実験に対して、国連で制裁を科す
決議案を推し進める一方、孤立した(北朝鮮)政権を核放棄協議に復帰
させる動きの一環として、中国がピョンヤンに外交官を派遣した。

 先週の北朝鮮のミサイル・テストによる被害は何もなかったものの、
国際的な非難が火を噴いた。
 このテストに激しく動揺した日本政府当局者は、本日、日本の憲法が
北朝鮮のミサイル基地への先制攻撃を許すものかどうかを検討してい
る、と述べた。
 
 しかしながら、米国とこの地域の国々は、ミサイル発射に対する国連
の対応を決めかねている。
 米政府と日本政府は制裁を支持しているが、中国政府とロシア政府は
北朝鮮との対話を優先する。
 
 日本は反対にもかかわらず、国連安保理決議について少しも譲歩する
様子を見せなかった。

 中国も活発に動き、昨日、リ外相が、11カ国の理事国と韓国の外相
と電話会談した。

 米国が中国に対して、北朝鮮がさらなるミサイル・テストを放棄し、
6カ国協議に復帰するよう説得することを要求した結果、中国が北朝鮮
に外交官を派遣することとなり、本日、彼らがピョンヤンに到着した。

 バーンズ米国務次官は、「今、中国に、その最良の歩を進める機会が
訪れている」と語った。

 本日、ヒル国務次官補が東京で麻生外相と会談した。
 彼は北京、ソウルを訪問後に東京を訪問したが、終始一貫して、一致
した対応を強調した。

 これらの一連の会談は、日本と韓国の間で、北へのアプローチが割れ
ている最中に、行われた。
 昨日、韓国政府は、北朝鮮のミサイル・テストに遠慮ない批判をする
日本を、厳しく非難する声明を出した。

 日本政府高官は、本日、北のミサイル基地に先制攻撃を加えられる法
的枠組みをつくるべきかどうか検討すると公言した。

 米国によって起草された日本の憲法は、戦争で国際紛争を解決するこ
とを禁じており、日本の軍隊を厳重に規制してきた。

続く